これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、2000年代に登場した“最後の”ロータリースポーツ、マツダRX-8を取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/マツダ
■夢のエンジンを実用化したマツダだからこそ作れたスポーツカー
かつてマツダは「夢のエンジン」と言われ、実用化が困難とされていたロータリーエンジンの量産を世界で初めて成功させた。ロータリーエンジンは、1967年にデビューしたコスモスポーツ以降、マツダの基幹車種に搭載されてきたが、2012年に量産終了している。
しかしマツダは、過去の遺物と揶揄され、存続の危機に直面しながらもロータリーエンジンの研究と開発を続け、2023年6月には「MX-30 Rotary-EV」で復活させて生産を開始。同年10月にはロータリーエンジン搭載車の累計生産は200万台に達した。
ロータリーエンジンは10A型から始まり、排気量を573cc×2に改良された12A型。655ccのツインローターにしたもののトラブルが頻発して短命に終わった13A型。性能、信頼性ともに大幅に高められて多くの車種に搭載された13B型。
さらには、3ローターユニット20B型と、市場に導入から50年以上にわたって進化を続けてきた。
そして1999年には、新たなるロータリーエンジン(RE)の始まり(Genesis)」を意味する「RENESIS(レネシス)」の名を冠した新世代ロータリーエンジンが登場する。
サイド排気/サイド吸気などの革新技術によって、総排気量654cc×2の自然吸気でありながら最高出力250ps/8500rpm、最大トルク216Nm(22.0kgm)/5500rpmというスペックを実現するとともに、燃費や排出ガスのクリーン化についても従来のロータリーエンジンに比べて大きく改善。
この13B-MSP型ロータリーエンジンを搭載したのが、2003年4月に発表(発売は5月)された「RX-8」である。
新世代ロータリーエンジンを搭載した、マツダのシンボリックなスポーツモデルとして登場したRX-8は、「New 4door Sports for 4Adults」というコンセプトを掲げ、4ドアで4シーターの本格スポーツカーというかつてない価値を具現化することを狙って開発された。
当時マツダは、RX-8の訴求要素として、他車と一線を画す個性的なスポーツカースタイルによって、ユーザーの自己表現欲求に応え、高い水準のスポーツカー性能によって比類なきドライビングエキサイトメントを提供すること。
さらに、大人4人が乗れる居住性やユーティリティなどによって、既存のスポーツカーとは明らかに異なるフレキシブルな実用性を提供することを挙げていた。
これにより、スポーツカーでしか手に入らない個性や走りが手に入ると同時に、家族や友人のためにスポーツカーに乗ることをあきらめていた人の夢を実現したいと考えていた。
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