エコカーの柱へ成長したクリーンディーゼルの意外な落とし穴

 マツダのSKYACTIV戦略以来日本車、輸入車ともに低燃費なうえに日本では軽油が安いため燃料コストが安くすむクリーンディーゼルはハイブリッドと並ぶエコカーの柱に成長し、車種、販売台数ともに増加傾向にある。

 しかしクリーンディーゼルには扱い、そもそもクルマを買う際の選び方、メンテナンスに若干の注意が必要な部分もあり、当記事ではそんなクリーンディーゼルの落とし穴を解説する。

文:永田恵一/写真:MAZDA


ガス欠は絶対に厳禁

2012年2月に2.2LのSKYACTIV-D 2.2をラインナップしてデビューしたマツダCX-5 。日本でクリーンディーゼルを認知させた功績は大きい

 どんなクルマでもガス欠や電気自動車の電欠は危険なこともありしたくないものだが、ディーゼル車は特にガス欠を避けたいジャンルだ。

 その理由は2つあって、ひとつ目はディーゼル車はガス欠すると燃料系にエア(空気)が入りやすく、エア噛みによる不調を防ぐためにエア抜き作業が必要になるため。

 ふたつ目はディーゼル車の高圧な燃料ポンプや燃料を吹くインジェクターは軽油に潤滑性があるから使えるもので、ガス欠により空打ちしてしまうと双方へ大きなダメージを与える可能性があるためである。

ガス欠が危険なのはガソリン車もディーゼル車も同じだが、ディーゼル車は車両へのダメージが甚大。ガス欠はほぼ人的ミスゆえ燃料計のチェックは忘れずに

 同じガス欠でもガソリンエンジンとディーゼルエンジンではクルマへのダメージは雲泥の差があるのだ。

 そのため現代のクリーンディーゼル車の中には本当にガス欠になる前に燃料噴射を止め疑似的なガス欠状態として、前述した問題が起きないようにしているクルマもあるくらいだ。

ディーゼル車は街乗りに向かない!?

 ディーゼルエンジンは燃料に軽油を使うこともあり、黒煙の原因にもなるススが溜まりやすい。ススは高速道路のような負荷がかかる乗り方が多ければ溜まりにくいのだが、負荷の小さい街乗りが多いと溜まりやすく、パワーダウンや燃費の低下といった不調の原因となる。

神経質になりすぎる必要はないが、ディーゼルエンジンは車速約15km/h 以下で走り続けている時、10 分以下の短時間走行の繰り返しやエンジンが暖機できないような走行を繰り返した時、長時間アイドリング状態の時に排気ガスに含まれるPMが自動除去できない場合もあるという

 そのためユーザーの使い方の問題もゼロとはいえないにせよ、マツダの1.5Lディーゼルはススが溜まることを想定した予見性リコールを発表したくらいである。

 エンジンを普段回すことがあまりなくススが溜まらないようにするには、週1回程度高速道路などで低いギアを選んで、合法的な範囲で30分くらい高回転域をキープするのがいい。

 似た話でクリーンディーゼルには排ガスに含まれる粒子状物質を溜めるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)が備わっており、DPFに粒子状物質が溜まると熱くなったDPFに軽油を吹いて除去する再生が行われる。

 DPFの再生の頻度は負荷のかかる乗り方をしていればそれほど多くないのだが、負荷の小さい乗り方が多いと増えがちだ。

 また負荷が小さい上に走行時間も短いチョイ乗りばかりだとDPFの再生がエンジンを止めた際に中断されたり、DPFが熱くならないために行われないなどDPFが詰まって不調に原因になることもある。

 さらにDPFの再生には軽油を使うだけに燃費も一時的にせよ低下するので、街乗り&チョイ乗りが多いためにDPFの再生が多いと、クリーンディーゼルの燃費のよさというアドバンテージは大幅に薄れてしまう。

マツダ車の場合DPFがつまった時の警告方法はディスプレイに警告表示と警告灯が点灯・点滅するタイプがあるが、マツダ3のみディスプレイと警告灯の両方で警告

 このあたりを考えると、「街乗りが多い≒走行距離が少ない」という使い方が多いなら、そもそもディーゼルエンジンがアウトバーンのような高速走行でも燃費がいいというメリットを持つものだけに、クリーンディーゼルを選ぶこと自体を考え直すべきではないだろうか。

 具体的には高速道路を中心に走行距離が多いならクリーンディーゼル、街乗りも多くて走行距離がそれなりに多いというならハイブリッド、街乗りばかりで走行距離が少ないというのなら価格の安い普通のガソリン車か中古車を含む電気自動車といった考え方で、費用対効果も加味して自分に合ったパワーユニットを選ぶのも得策と言えるだろう。

三菱エクリプスに待望のクリーンディーゼルが追加されたが、クルマをどのように使うのかなどを考慮してエンジンを選ぶのが得策

オイル交換代はかさみがち

 マツダアテンザの説明書を見ると、エンジンオイルの量は2.5LガソリンNAがオイルフィルターを含め4.5Lに対し2.2Lディーゼルターボは同じ条件で5.1Lと多い。

 さらに交換サイクルもマツダ車はノーマルコンディションでガソリンNA車が1年1万5000km、ディーゼル車は1年1万kmの早い方と短いので、オイル交換にかかる費用もいくばかであるが多くかかる。

寒冷地に行く際には軽油の凍結に注意

 最後は季節外れで恐縮だが、まだ夏なのにと侮るなかれ、ディーゼルエンジンの宿命で、最悪命に係わる大きな落とし穴となるので覚えておいてほしい。

 軽油自体が本当に凍るわけではないのだが、軽油にはワックス分が混ざっており、低温になると結晶が分離し、この結晶が多いと燃料ポンプのフィルターが詰まりエンジンがかからなくなる、アクセル操作に対するレスポンスが悪くなるなどの変調が起きることがある。 

 そのため北海道を代表に冬場の寒冷地では凍結しにくい軽油が販売されている。

軽油はJIS規格によって特1号、1号、2号、3号、特3号に分類され、数字が大きくなるほど凍りにくくなる。冬場の寒冷地では3号、特3号が販売されている

 寒冷地で使われているクルマであれば給油も現地で行うので問題ないが、注意したいのが冬場でも比較的温暖な地域などから寒冷地へディーゼル車で帰省する、旅行する、スキーに行くといったケースだ。

 その場合は以前からよく言われていることだが、「目的地までの距離と燃費から計算して目的地で燃料が半分以下になる燃料残量で出発し、目的地で早めに満タンにする」というのが基本的な対応だ。

 そうしておけば凍りにくい軽油が混ざるので軽油の凍結の心配もなくなる。

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 このようにクリーンディーゼル車は扱いに若干の面倒や向き不向きがあるパワーユニットでもあるので、クルマのジャンル(車重が重く空気抵抗が多いといった負荷が大きいSUVやミニバンとの相性は良好だ)や自分の使い方を慎重に考えて選んでほしい。

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