販売チャンネルがなくなれば姉妹車は不要
トヨタには有力な地場資本のディーラーも多く、全店が全車を扱っても、即座に売れ筋車種の低価格化が進むとは限らない。それでもクラウンやカムリのような上級セダンは、次第に売りにくくなる。
販売系列を廃止する理由は、商品開発と販売面のリストラだ。
まず商品開発では、専売車種を含んだ系列化があれば、多くの車種を揃えねばならない。トヨタならアルファード&ヴェルファイア、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、プレミオ&アリオンのように、販売系列に応じた姉妹車を造り分ける必要も生じる。
それが販売系列を廃止して全店が全車を扱えば、先に述べたように日産はデイズ、デイズルークス、ノート、セレナの4車種があれば運営できてしまう。
ホンダもN-BOX、N-WGN、フィット、フリード、ヴェゼル、ステップワゴンがあれば国内市場を成立させられる。
販売系列を廃止すれば、商品開発の負担を大幅に減らせるのだ。
車種、販売店のリストラが進む
販売面では、販売店の削減が可能になる。専売車種を含めた系列があると、特定の販売店を廃止すれば、その地域に供給できない車種が生じてしまう。例えばトヨタ店を閉鎖すれば、その地域でクラウンを販売しにくくなり、顧客は遠方まで出かけなければならない。
しかし全店が全車を扱えば、周囲の販売店で補える。都市部にはトヨタ店とカローラ店が隣接しているような地域も多く、全店が全車を扱えば、販売店舗数が過剰になって自然に閉鎖に向かう効果も生じる。
実際、日産の販売店舗数は、2003年頃には全国に約3100箇所あったが、全店が全車を扱うようになって閉鎖が進み、今では2100箇所まで減った。ホンダも2003年頃は2400箇所だったが、今は2200箇所になっている。
販売店が閉鎖されると、顧客にとっては馴染みのディーラーがなくなるから、不便を強いられてしまう。また販売店にはサービス工場が併設されるから、店舗が閉鎖されると、車検や点検、リコールなどの作業を行うサービス網まで縮小される。
このように販売店の閉鎖は、顧客にさまざまな迷惑をかけることになり、販売系列の廃止や全店の全車扱いは、そこに向かう最初の段階に位置付けられる。
メーカーは系列の廃止などに際して、「全店で全車を扱えば、お客様にとって便利になる」とコメントすることが多い。あながち嘘とは決め付けられないが、一種の詭弁だ。
メーカーや販売会社の先輩たちは、上質なサービスを提供しながら車種を充実させるために、販売系列を整えたからだ。
逆に系列を廃止すると、上質なサービスを提供しにくくなったり、取り扱い車種が減少に向かう。これが販売系列をなくす最終的な目標だ。
今後はカーシェアリングなどに対応した新しい店舗も用意されるが、車種と販売店の数が今に比べて減ることは間違いない。せめて顧客が不便を感じることがないよう、最小限度の配慮は怠らないでもらいたい。
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