WECチームに家族愛が足らん!? [ハースF1]と提携して[トヨタ]のモリゾウさんはなにをするのか?

■WECチームに足りないものとは?

会見での一コマ
会見での一コマ

 筆者は、10月11日の会見が終わってから「F1に行かなければできないことって何だろう?」とずっと考えていたのだが、ある推論に辿り着いた。それは「WECチームをモリゾウ軸に改革するため」じゃないか……と。

 WECチームは旧トヨタF1チームが由来であり、F1をやめた豊田氏とのわだかまりや遺恨が今も少なからずあると思っている。豊田氏は以前筆者にこのように答えている。

「WECのチームは今も昔もプロフェッショナルですが、モリゾウが大事に、そして目指すチームの理想は、あくまで『家庭的でプロフェッショナル』という部分です。WECチームはそこが足りなかった。言葉を濁さずにいえば、トヨタの会長/社長は存在するけど、モリゾウは存在しないチーム。ただ、可夢偉代表を筆頭に一貴、そして加地(雅哉=TGRモータースポーツスポーツ担当部長/技術室室長)など、若いメンバーがドライバーファーストかつ家庭的でプロフェッショナルなチームにするために一生懸命動いていること、現場が頑張っていることは知っている。でもね……」

 筆者はその「でもね……」を探しに、WECやドイツ・ケルンにあるTGR-Eに何度か伺ったが、そこで感じたことは? 非常に抽象的で申し訳ないが「すべてを“内輪”で完結」、「我々がトヨタの最先端技術を担っているという“おごり”」、「君たちとは違うという“特権階級意識”」である。上手くいえないが、どこか温かみがないチームに感じてしまった。

 こんなことをいうと関係者から「お前に何が解る!!」とお怒りの声が出るかもしれない。最初は自分だけが偏った見方をしているかと不安になったが、筆者よりも近い所でトヨタをウォッチしているフォトグラファーの三橋仁明氏に打ち明けてみると、「ファインダーを通して見ても、たしかに、モリゾウ軸とは違う、何か『違和感』のようなものは感じますね……」「ただ、ドライバー、エンジニア、メカニックの一人ひとりは、それぞれの役割りを一生懸命やっていると思います」と。

■「自己鍛錬」ではなく「新しい風」が必要

ハースF1マシンのノーズコーンには、新たに「TOYOTA GAZOO Racing」のロゴが加わっている
ハースF1マシンのノーズコーンには、新たに「TOYOTA GAZOO Racing」のロゴが加わっている

 豊田氏に以前「トヨタにとって脅威なのは、『従業員がトヨタは大丈夫だ』と思うこと」だと聞いたことがある。

 トヨタの強みは危機感の共有だ。その本質は「危機感は人から与えられるモノではなく、自分が持つことが重要であり理想」と言うことだが、WECチームはそこが欠けているような気がする。

 その危機感の一つは「なぜ、モリゾウ軸になれない?」だと思うが、残念ながら人から与えられた課題である。それを自分事にできないことが問題だ。

 確かにWECチームは2012年から参戦を行ない、“独自”でマシン開発を行なってきた。ハイブリッド技術の構築のために、トヨタの最先端の技術がここで鍛えられてきたのも事実である。

 その努力は、トヨタ念願のル・マン制覇、シリーズチャンピオンを何度も獲得することで証明されている。今年は苦しい戦いだが最強チームの1つであることは間違いないだろう。

 ただ、最強であるがゆえに「自己鍛錬」だけでは限界がある。それはチーム運営も含めてだ。それを変えるには「新しい風」が必要だ。

■大きなトヨタから小さなトヨタへ

筆者は、今回の提携はWECチームがモリゾウ軸になるための大きなチャンスだと考える
筆者は、今回の提携はWECチームがモリゾウ軸になるための大きなチャンスだと考える

 これまでトヨタへの「新しい風」が様々な改革をしてきた実例がある。

 2007年に生まれた「小さなトヨタ」……“元祖”GRの活動が「大きなトヨタ」を変えたことはいうまでもない。WRC復帰も、トヨタ自前ではなくTMレーシングとコラボレーションだったし、さらにニュル24時間から繋がるS耐のカーボンニュートラルの挑戦も、ROOKIE Racing(豊田章男氏のプライベートチーム)とのコラボレーションだった。

 これらはトヨタとは異なる「小さい組織」「プロフェッショナル/即断即決ができる組織」と同じ目的・考えを共感しながら挑戦を行なっており、様々なひらめきやイノベーションが生まれているのも、紛れもない事実である。

 ただ、WECチームは他の参戦カテゴリーと異なりコラボレーションを行なう相手が限られる。そう、F1しかないのだ。

 そういう意味では、筆者は今回のHaasとTGR提携がもっとも活きる部分は、実はWECチームじゃないかなと思っている。

 高橋プレジデントに聞くと、「今回の提携内容のメインはドライバーですが、メカニック/エンジニアに関しては、すべてではありませんがそのような考え方もあるでしょうね。そもそもWECチームに関しては会長から多くの“宿題”も貰っていますし」と答えてくれた。

 筆者は今回の提携は、WECチームがモリゾウ軸になるための大きなチャンスだと考えている。TGRのすべてのモータースポーツ活動が「ワンチーム」で「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に色濃く貢献できる体制なれることが理想だが、筆者は今回の提携はそのリスタートだと思っている。今後も多角度から追っていきたい。

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