2020年11月に開催予定だった、WRC最終戦ラリージャパン2020の中止が、2020年8月19日に発表された。2019年はWRCプロモーターから「カレンダー入りは確実」とお墨付きをもらいながらも、最終局面で反故にされた。
そして、2020年は新型コロナウイルスの影響により、自主的に開催断念をWRCプロモーターおよびFIAに伝達。
2年連続で開催実現に至らなかったことで、ラリージャパン2020実行委員会の関係者は大きく落胆している。
実行委員会の髙橋浩司会長は、「次回2021年大会については開催が内定しており、開催実現に向けてすぐに準備にとりかかります」と述べているが、果たして2021年にWRCファンはラリージャパンを本当に見ることができるのだろうか?
2020年のWRCはコロナ禍によって中断を余儀なくされていたが、8月に再開となり、第4戦ラリー・エストニア終了時点で、ドライバーズはトヨタのセバスチャン・オジエがポイントトップに立っている。
いっぽう、マニュファクチャラーズでもトヨタが僅差ながらトップを走っているだけに、開催中止は残念すぎる。
文:古賀圭介/写真:TOYOTA、HONDA、ベストカー編集部
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ラリージャパンは2021年の暫定カレンダーに入っている
ラリージャパン2020実行委員会の髙橋会長によれば、WRCプロモーターとは2021年までの契約があり、FIA側も来季の暫定カレンダーの一部にすでにラリージャパンを据えている。
つまり、何かが起きない限りは、開催されると考えていい。最大の不安要素はもちろん新型コロナウイルスの蔓延であり、来年の冬に状況がどうなっているのか、それを予測するのは感染症の専門家をもってしても難しい。
ひとつの判断基準となるのは、感染再拡大が懸念される、2020年秋から冬にかけての国内外の蔓延状況だ。もし、目に見えて収束に向かっているようであれば、ラリージャパン開催の可能性は高まる。
来季ラリージャパンの開催可否を最終決断するタイミングは、2020年と同じく8月頃になるだろう。その頃に、延期された東京オリンピックが開催されているかどうか? それもまた大きな判断要素となる。
もし東京オリンピックが実現していれば、ラリージャパンにとっては強い追い風となる。多数の外国人の入国制限が解除されているはずだからだ。
2020年、ラリージャパンを断念した最大の理由は、300人を超える外国人WRC関係者の入国が、現実的ではなかったこと。
もし東京オリンピックが実現すれば、入国制限も緩和されるはずなので、少なくともその点についての問題はクリアになる。
しかし、仮に東京オリンピックが中止になったとしても、そこから数カ月後のラリージャパンがそれに従わなければならないということではない。
現場でラリーを見ることはできるのか?
では、実際にラリージャパンが開催されたとして、現地での観戦はできるのだろうか? 無観客試合の可能性もあるのだろうか?
あくまでも個人的な考えだが、無観客試合はないと推測する。なぜなら、スーパーフォーミュラやスーパー耐久ではすでに人数を限定しながらも観客を迎えており、スーパーGTも10月の富士戦から観戦チケットを販売する。
さらに、今後大規模イベントにおける参加者の上限は撤廃される方向にあり、2021年11月となれば、制限は諸々さらに緩められている可能性が高い。
8月にシーズンが再開したWRCに目を向けると、WRC初開催のラリー・エストニアは感染対策を徹底したうえで、約1万6000人の観客を迎えた。そして、今のところ大規模なクラスターの発生はないようだ。
9月のトルコ、10月のイタリア(サルディニア)は無観客試合を選び、WRC初開催となる11月のベルギーはまだどうするのか発表がない。
ただし、いずれのラリーでも新型コロナ対策はかなり念入りになされているようだ。2021年11月までには、WRCにおける感染防止プロトコルはさらに進化し、より完成度が高まっているはずだ。
それでも、各開催国で突発的に感染者数が増え、急きょ中止になる可能性は否定できない。そのため、2021年のWRCに関しては中止の可能性が低く、中止になっても代替イベントへの差し替えが容易な欧州圏のラリーを、できるだけ多くカレンダーに含めようとしているようだ。
いまだ感染拡大が続いているメキシコ、アルゼンチン、チリに関しては中止のリスクが大きいため、2021年はカレンダーから除外される可能性が高い。
また、機材輸送の問題もあるため、日本を含めた欧州以外のラリーは、シーズンの後半に集められそうだ。
中盤までに欧州内で開催イベント数をなるべく増やしておき、そのうえで確実性が低い欧州外のイベントを終盤積み重ねていく方式になると、いわれている。
トヨタはWRCの参戦を続けるのか?
ところで、先日GRヤリスを販売開始したトヨタは、この不安定な状況においても、今後もWRCに参戦し続けるのだろうか?
世界的な景気後退という厳しい状況下でもしっかり黒字を出したトヨタだが、モータースポーツの予算縮小はやはり避けられないだろう。
それでも、WRC参戦はトヨタおよびGRブランドのグローバル戦略の中核を成すプロジェクトであり、しかもこれからようやくGRヤリスのプロモーション期間に移行するのだから、普通に考えればあと3年は参戦を続けるのではないだろうか?
GRヤリスをベースとするハイブリッドマシンがWRCで走り始めるのは2022年から。それから1、2年で活動を止めるということは、これまで投じてきたコストの回収を考えてもマイナス要素が大きすぎる。
そう考えると、少なくとも2024年まではWRCに出続け、それに伴いFIAおよびWRCプロモーターはラリージャパンに重きを置き続けるのではないかと期待する。
なかなか新規マニュファクチャラーが参戦しない状況で、トヨタのホームイベントであるラリージャパンをシリーズから外すことは得策ではない。
トヨタが参戦を続ける限り、ラリージャパンはWRCのアジア地区を担うイベントとして、カレンダーに残り続けることだろう。