なにかと話題のシビックタイプR。日本ではテストコース内でのわずか数分の試乗のみしか許されてないが、なんとヨーロッパではアウトバーンとサーキットでの試乗会が開かれた。
そこでフランスのナンバーワン自動車誌『L’Automobile』の全面協力で、インプレッションを入手した。速度無制限の世界で走る、新型タイプRの評価はいかに!?
文:Gaël Brianceau/翻訳:ベストカーWEB編集部/写真:Alex Krassovsky
協力:L’Automobike
アウトバーンで走ってわかった圧倒的動力性能
新型のシビックタイプRはたしかにサーキットでとてつもない速さを見せつける。
しかしこのクルマは自身が持つすべての要素を運動性能、そして究極の滑らかさに捧げていて楽しむスキがない。
だから”楽しさ”という点ではプジョー308GTiやフォードフォーカスRSには適わない。試乗前は筆者はそんなことを思っていた。
試乗は我々の本拠地フランスのお隣、ドイツで行われることになった。日本で一般的に知られる「アウトバーン」のうち、今回は”ナンバー13″と呼ばれるドレスデンからベルリンを結ぶルートでの試乗になった。
「速度制限区間の終わり」という狂気じみた標識を見ると、”スピードは悪だ”と骨の髄まで叩き込まれてきたフランス人には、そのストレスから解放される瞬間でもあった。
アウトバーンにはいくつかの速度無制限区間がある。そのすべてで、私はアクセルペダルに拷問をかけるかのように踏み抜いた。
ペダルがフロアに付く時間は人生でもっとも長かったかもしれない。前モデルより10psもパワーが向上した320psのFF車は、あっという間に200km/hの壁を超える。おぞましいパワーとトルクでFF車という認識は消えていた。
この日本車(とはいってもイギリスで生産される)は、まるで”シンカンセン”のような安定性をもたらす。
TGVやユーロスターではなく”シンカンセン”だ。このクルマの”シンカンセン”並みの最高速272km/hまでの加速は交通事情もあり確認できなかったが、限りなくその数値に近づくことはできた。
決して誇張でもなんでもなく、このシビックタイプRには270km/hなんぞ簡単に達成できるスピードということはわかる。
ガンダムのような”いかにも”な外観はさておき、2Lターボのパワーユニットは賞賛に値する。
レスポンスがとてもよく、2000rpm以下ではトルクフルでまるでディーゼルエンジンのように力強く、そしてマイルドだ。
しかし本領発揮は2500rpmを超えてから。性格が豹変する。
ドライバーの背中をシートバックに押しつける圧倒的な推進力は、いとも簡単にドライバーを”ゾクッ”とさせる。思わずアクセルを緩めるような加速感だ。
さらにそのエギゾーストは3本のマフラーから勇ましいサウンドを伝える。4気筒エンジンはメカニカルな音を発するが決してこれも不快な類ではない。
ただ私には少し賑やかに感じる。このシビックはスペックを鑑みれば、オトナ仕様としての多大な努力をしていると思う。
センタータンクレイアウトの前モデルに比べればドライビングポジションは極めて向上したし、ダンパーの”コンフォートモード”の存在で普段使いだってなんら問題のないモデルへと進化した。
よくぞここまで調教した、と感心するほどにだ。
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