今年(2020年)2月の新型フィット、アコードの発売以後、表向き目立った動きのなかったホンダだが、ここにきてホンダeの正式発表、オデッセイのビッグマイナーチェンジのアナウンス、N-ONEのフルモデルチェンジ発表と、にわかに活気づいてきた感がある。
それらのいくつかはコロナ禍による様々な発表が先延ばしになった結果、という面もあるが、バックヤードに目を向けてみれば、遡ること4月には研究所と本社との事実上の統合がなされ、ホンダの新車開発そのものが大きな転換期へと突入していくと見られる。
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※本稿は2020年9月のものです
文:ベストカー編集部/写真:HONDA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年10月10日号
■売れるクルマを効果的に投入する
ホンダの新車計画に大きな動きがありそうだ。
本誌スクープ班が、開発に近いホンダ関係者や、マーケティング部門の関係者、さらに販売店の上層部などに接触し、話を聞くと、今後5年程度の中期的な商品投入計画に、これまでとは違った動きが出ているというのである。
その大きな引き金となったのが、今年4月、4輪車の開発体制を従来の本田技術研究所(栃木)主体から、事実上研究所を本社に統合し、本社主導の体制に組織編成を改革したことにある。
これによって研究所機能は縮小され、ホンダの新車開発は、名実ともに青山の本社四輪事業本部主導になった。
これまでは、建前として本田宗一郎氏が掲げた「技術開発が金の心配はするな」という精神のもと、研究所が技術開発を進めていくという方針がホンダの特徴だった。
しかし、そうはいっても実際のところ、20年以上前から青山と栃木は一体化していて、青山の意向がそのまま栃木の方針になっていた。
特に、研究所の社長を務めたのちに青山本社の社長になっていくという、現在の八郷社長以前のルートが確立したことで、ますます「出世を望む」開発系の社員は、青山の顔色を窺うようになっていたというのが実情だ。
したがって、4月の機構改革は内部の人たちにとっては「やっと、実情に組織体制が合わせてきたか」というとらえ方で、即座にホンダのクルマ作りの方向性が変わるものではない、というとらえ方も多いのだが、それでも会社組織として本社主導が明確化されたことで、本社の意向がこれまで以上に大きく新車投入計画に生きることになる。
今の時代、「プロダクトアウト」の開発では商品力を高めることは難しくなっており、「マーケットイン」でニーズをとらえた新車=商品を提供していかなければ生き残っていけないというのはわかりきったことである。
確かに、これまでのホンダのクルマ作りを振り返ると、4輪黎明期のN360、S600シリーズ、初代シビック、CVCCエンジン、ホンダマチックなど、コンセプト面で独創的かつ、技術的にも革新的なものであふれていた。
1980年代の2~3代目プレリュード、3代目アコードのエアロデッキなども新たなジャンル開拓に挑戦した意欲作。マーケットインの企画手法では出てこなかったクルマたちだ。
1990年代の初代オデッセイ、初代ステップワゴン、初代ストリームなどもいかにもホンダらしいモデルで、いずれも他社が追随する新たなジャンルを切り拓いた。
しかし、ここ最近のニューモデルを見ていると、こうした“ホンダらしい”モデルが見られない。研究所と青山の本社の微妙な力関係というか、意思疎通の狭窄がその要因となってしまったことは否めないだろう。
しかし、前述のように、組織体制として明確に企画/開発体制が整ったことで、マーケットインとプロダクトアウトの絶妙なバランス感覚が構築されつつあるというのだ。
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