■マツダが来年追加するのはロータリーHVかPHEV!
PHEVもシリーズハイブリッドも、構造としてはレンジエクステンダーEVとほとんど変わりない。異なるのは外部充電ができるか、ということとバッテリー容量の違いだ。
シリーズハイブリッドは日産のe-Powerを見ればわかるようにエンジンが発電し、バッテリーに一時蓄えてモーターだけの駆動力で走行する。バッテリーの搭載量は極めて少なく、ノートの場合はわずか1.5kWhだけだ。
そしてPHEVはシリーズハイブリッドに外部充電機能を追加したもので、バッテリーの容量はシリーズハイブリッドより多く、EVより少ない。例えば三菱アウトランダーPHEVは13.8kWhで、バッテリーのみの航続距離は65kmとなっている。
前述のデミオEVのレンジエクステンダーユニットは、300ccの1ローター・ロータリーエンジンで100kgの重量増となっていた。一方、MX-30のEVモデルの場合バッテリーの重量は310kgと言われている。バッテリーの搭載量を3分の1に減らしてPHEVとすれば、むしろEVよりも100kgも重量は軽くなることになる。
そしてEV 1台分のリチウムイオンバッテリーでPHEVを3台生産することができれば、リチウムやコバルトの有効利用にもつながることになるのだ。
デミオEVをベースにした場合、レンジエクステンダーの能力は9Lのガソリンで200kmの航続距離延長、つまりリッター20km以上の燃費性能を確保していた。
同じエンジン回転数では大きく重いMX-30を同じ燃費性能は実現することは難しいだろうが、回生充電も大きくなるので車重による燃費の低下はエンジン車よりも少ない。
日常的にEVを利用するドライバーの1日の走行距離が50km程度までであるなら、バッテリーの容量は35.5kWhよりも少なくてもいい。バッテリーの電力を使い切った時に走行不能にならない手段さえあればいいのだ。
むしろ200kmの航続距離を確保しているEVに単純にレンジエクステンダーを追加すると、よほど遠くに出掛ける時以外は、エンジンが発電する機会は得られない。ということは、常に100kgの荷物を積んで走行させていることになり、無用の長物と化してしまう可能性があるのだ。
つまりマツダMX-30の場合、当初レンジエクステンダーEVとしての投入を計画していたが、いろいろ検討しているうちにPHEVやシリーズハイブリッドのほうがニーズがあることに気付いた、ということだろう。
スクープ記事は、そうしたマツダの動きや考えを、どこからか断片的にキャッチして、レンジエクステンダーの開発が後回しになったことを開発中止と解釈したのだろう。
そのレンジエクステンダー投入中止をロータリーエンジン投入中止と勘違いしてしまったメディアやコメンテーターが慌てただけのことで、ロータリーエンジンによる発電装置はまったく問題なく、それどころかマツダはさらに効率を高めて商品価値を向上させて投入しようとしているのである。
■ロータリーエンジンを使った発電ユニットを他モデルに展開する可能性は?
さらにロータリーエンジンを使った発電ユニットを他のモデルにも搭載する可能性についても、マツダ広報部に尋ねてみた。
「申し訳ございません。他の車種への展開についてはお答えできませんが、お客様からのご要望などさまざまな要素を踏まえ、可能性を検討していきます」
今年6月に発表された「中期技術・商品方針 2021」によれば、2025年までにフルハイブリッドとPHEV、EVの3種類で合計13モデルを発売する計画であるから、そのなかには(ロータリーを活用する)シリーズハイブリッドとシリーズハイブリッド構造のPHEVが何台かは含まれているハズだ。
もちろん、直列4気筒エンジンのパラレルハイブリッドも存在するし、FRプラットフォームをベースにした電動4WD(つまりフロントをモーター駆動)のパラレルハイブリッドも登場する可能性は高い。
それと同じくらい、ロータリーエンジンを搭載したシリーズハイブリッドもMX-30以外の車種でも設定される可能性があるということだ。
それはMX-30と同じEV専用プラットフォームをベースにしたモデルなのか、それとも新たに開発されるスケーラブルアーキテクチャー(可変サイズのプラットフォーム)なのか、他社との共同開発なのかはわからない。ともかく今後の4年間だけでも、マツダの商品攻勢は楽しみなものになりそうだ。
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