■最近のポルシェ911は9割近くがDCT
しかし、近年の「トランスミッションはDCTがメイン」となった世代の輸入スポーツカーにおいては、MT車とAT車の比率は完全に逆転する。
例えば「タイプ991」と呼ばれる先代のポルシェ911では、前述日現在の全掲載台数が291台で、そのうちの256台、つまり9割近くがAT車(7速DCT車)だ。MT車は35台のみで、しかもGT3などのスペシャルモデルではない「普通のカレラやカレラS」の7速MTは、13台しか流通していない。
PDK(ポルシェのDCT)がメインとなって以降、「MTのポルシェ911カレラ」は日陰の存在、というわけでもないが、少なくとも「かなりの少数派」ではあるのだ。
しかし少数派ゆえに、中古になるとは話は別。7速MTの991型ポルシェ911カレラ/カレラSには価値があり、また「7速PDKはもちろんいいんだけど、オレがポルシェに求めているのはそこじゃない!」と考える人もそれなりに多い模様。
中古車価格はもちろん個体によりバラバラではあるのだが、類似条件車同士で比べてみると、3Lターボエンジンに変更される前の3.4L自然吸気エンジンを搭載した前期型911カレラの場合で、走行5万km付近のカレラPDKは800万円前後。それに対して7速MTのカレラは、900万円前後のプライスが付く場合が多いようだ。
ちなみに、当然ながら往年の空冷ポルシェ911においてはAT(ティプトロニックAT)よりもMTのほうが、人気も相場も圧倒的に高い。
タイプ964(1989~1993年)は全掲載台数が64台で、5MT車が43台であるのに対して4速ティプトロニックAT車は21台。
類似条件車の価格は、走行7万km前後のカレラ2ティプトロニックが700万~800万円ほどであるのに対し、5MTのカレラ2は900万~1000万円となっている。つまりティプトロニック車よりもMT車のほうが200万円以上高くなっているというわけだ。
■フェラーリもMT車のほうがだんぜん高い
現在ではAT(DCT)のみのラインナップとなっているフェラーリも、数世代前のモデルでは圧倒的にMT車の相場と人気が高い。
例えばフェラーリF355は2020年12月上旬現在の全掲載台数が18台で、そのうちセミAT(F1マチック)を搭載している「355F1」のほうが数は多く、12台がとりあえず流通している。
セミATの355F1も超低走行車(1万km台まで)は、1500万~1800万円ほどの値付けとなるのだが、走行3万kmを超えると途端に「800万円ぐらい」まで下がってしまう。これは、初期のF1マチックの信頼性がきわめて低かったゆえの現象だ。
しかし6MTのF355であれば、コンディションさえ良ければ走行3万kmを超えても1500万円ほどの車両価格がキープされ、さらに走行距離が少ない個体では2000万円以上のプライスとなることもザラである。
フェラーリのF1マチックの信頼性が上がったのはF430(2004~2009年)からなので、その前の360モデナ(1999~2005年)も、F355の場合と同様、MT車の相場のほうが断然高い状況となっている。
6速セミATを搭載した「360モデナF1」は、走行1万km台の禁煙車でも車両1000万円ほどで探すことができるが、6速MTの「360モデナ」で類似条件車を探すとなると、相場は1300万~1600万円ほどへと一気に跳ね上がる。
乗り味の観点からも、そしてリセール価格や維持費の観点からも(当時のF1マチックは、中古で買った瞬間にぶち壊れて約60万円が吹っ飛ぶ可能性もゼロではない)、このあたりの世代のフェラーリは「意地でもMTを探す」というのが正解となるのだ。まぁそのぶん、高くてなかなか買えないということになります。
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