■フライングブリック(空飛ぶレンガ)の再来として注目を集める
また、それまで頑丈で安全というボルボのイメージを覆すために1994年に850エステートで英国ツーリングカー選手権(BTCC)参戦。ステーションワゴンながら大健闘し優勝こそ逃したが、入賞を果たしたのだ。
この挑戦を見たメディアは1985~1986年に欧州ツーリングカー選手権(ETC)でチャンピオンに輝いたボルボ240ターボの「Flying Brick(空飛ぶレンガ)」の再来と賞賛した。こういったレースシーンでの健闘により、「安全なクルマ」だけでなく「早くてスポーティなクルマ」という強い印象を与えたのだった。
1993年~1997年まで販売されたボルボ850エステートは、ステーションワゴンの美点であるラゲッジスペースを最大化するためにボルボ伝統のリアが切り立ったスクエアなボディデザインを踏襲している。
そして、ボディの骨格にSIPSと呼ばれる側面衝撃吸収システムを採用し安全性を向上させている。また1994年には量産市販車として世界で初めて全モデルにサイドエアバッグを標準装備。
1995年にはエントリーモデルにもトラクションコントロールを搭載するなど安全装備を充実化させているのが特徴だ。エンジンは横置きとなり、駆動方式は2WD(FF)が中心となった。最小回転半径は先代モデルとなる240ワゴンの5.0mから850エステートは5.4mへと小回りが利かなくなった。
搭載するエンジンはデビュー当初、最高出力170psと140psという2つの仕様がある2.5L直列5気筒DOHCエンジン、そして最高出力225psを発生する2.3L直列5気筒DOHCターボエンジンの2種類。両エンジンともにトランスミッションは4速ATが組み合わされている。
1994年9月にはターボエンジン搭載車に5速MTを設定。1996年7月には最高出力193psを発生する2.5L直列5気筒ライトプレッシャーターボエンジンを追加。
このエンジンは4速ATのみが組み合わされた。ライトプレッシャーターボエンジンを搭載する2.5Tが追加されたことにより、2.3Lターボエンジンを搭載したグレードをターボからT-5へと名称変更している。
また、850がビッグマイナーチェンジして1997年2月に登場したV70にはボルボ初となるビスカスカップリングを採用した4WDシステム搭載車を追加。この4WDシステムは自動的に前後輪にトルクを配分するフルタイム4WDで、これは現在主力となっているXCシリーズのルーツとなっている。
■240psのスポーツワゴン、850T-5Rは即完売
850はさまざまな特別仕様車が設定されているが、走行性能に磨きを掛けたモデルとしてよく知られているのが、1995年に発表された850T-5Rだ。最高出力240ps、最大トルク330Nmまでチューニングされた2.3L直列5気筒ターボエンジンを搭載。
全世界で5000台販売され、日本ではセダンが150台、エステートが500台販売したが、数週間で完売した。なかでもクリームイエローは特に人気だった。
1996年3月にはターボをベースに最高出力240psへ出力向上をはじめ、各部チューニングが施された850Rを設定。トランスミッションは5速MTと4速ATを用意した。
この850Rは1996年9月にも販売された。販売台数はセダンが200台、エステートが合計900台。そして850のフィナーレを飾る特別仕様車として、充実した装備が魅力のクラシックが1997年1月から販売された。
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