新型のトヨタ 86およびスバル BRZもかなり気になるところではあるが、それと同時に「AE86」のほうのハチロク(4代目トヨタカローラレビンおよびスプリンタートレノ)も、大いに気になっている。
新車時価格は160万円ほどであったにもかかわらず、今や500万円オーバーが当たり前になった観があるAE86。だが、高値なのは承知で「でも買いたいのだ!」と熱烈に思っている諸兄、特に、青春時代をAE86と過ごした50代も多いのではないだろうか。
今となっては他のクルマではなかなか味わえない「小ぶりで軽量なMTのFRマシン」であるということ。そして漫画『頭文字D』や土屋圭市さんなどが作り上げた伝説または神話。その2点に、クルマ好きはどうしてもしびれてしまうからだ。
とはいえAE86といえば、もはや最終年式でも34年落ち。当然ながら「メンテナンスフリー」なんてわけには絶対にいかないはずで、部品の供給体制も気になるお年頃。
そして中古車のコンディションもおそらくは玉石混交であろうゆえ、どんな個体を選べばいいのかも正直よくわからない。
ならば「蛇の道は蛇」ということで、そのあたりのぶっちゃけた事情をAE86のプロフェッショナルに徹底取材を敢行!
文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹、トヨタ
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■AE86専門店「テックアート」に取材!
訪ねた先は埼玉県八潮市の『テックアート』。AE86のメンテナンスおよびチューニングを専門とするファクトリーであり、土屋圭市さんが所有する「土屋圭市 AE86 ストリート号」のメンテナンスを全面的に請け負っているプロフェッショナルだ。
――ということでテックアートの鎌田芳徳社長、今日はよろしくお願いします。昨今相場が急上昇しているAE86ですが、そもそもハチロクの中古車って今も普通に流通しているのでしょうか? つまり、探せばまだ普通に買えるものなんですか?
鎌田社長―5年ぐらい前までと比較すると流通量はずいぶん減りましたが、まだまだ普通に物件が出てくる状況ではありますよ。
――「5年ぐらい前までと比べると減っている」という理由は?
鎌田社長―今現在お持ちのユーザーさんがほとんど手放さないんですよね。それこそ10年ぐらい前は、漫画『頭文字D』の影響でAE86を買われた人々が「あれ? 思ったより維持費(修理代)がかかるクルマだな……」ということで割と早々に手放し、市場のAE86が増えた時期もあったんです。
しかしその後も乗り続けてらっしゃるユーザーさんは、みなさん硬派というか気合が入ってますので、そう簡単には手放しません。それでいてAE86を欲しがる人の数は減りませんので、どうしても流通量は少なくなります。そして、同時に相場も上がってしまうんですよね。
――少ないながらも流通しているハチロクの、現在の中古車相場っていくらぐらいなんでしょう? 「応談」が多くてよくわからないのですが、イメージとしては状態の良いモノが400万円から500万円ぐらいと見ているのですが?
鎌田社長―状態の良いモノというか、「最低ライン」が450万円から500万円ぐらいですね。
――さ、最低ラインでその価格ですか!
鎌田社長―そうなんですよ。弊社にもよく「自分の予算は350万円ですが、御社でハチロクを買えますでしょうか?」といったお問い合わせを頂戴します。しかし「申し訳ございませんが、最低でも500万円ぐらいにはなります」とお答えすることしかできないんですよ。
――350万円じゃ無理なのか……。
鎌田社長―まずですね、昨今AE86のコンディションは「ほぼ良くない」とお考えください。もちろん博物館級の個体も世の中には存在しますが、そういった個体は市場に出てきません。出てくる個体はほぼすべて、程度がよろしくないんです。そしてよろしくないのに、先ほど申し上げた事情により価格は上がってしまっているんです。
――具体的にはいくらぐらいなんでしょう?
鎌田社長―レースでガンガン使われて、ロールケージを組むための穴が開いているような車両に、とりあえず中古のノーマル内装を一応、組み付けた個体が、だいたい300万円ぐらいです。
――ひええ……。
鎌田社長―で、まずはその個体のブッシュまわりを見直して、ブレーキも修理して、エンジンオーバーホールをやるやらないはケース・バイ・ケースですが、水回りは必ず修理して、そしてエアコンはみなさん欲しいとおっしゃいますので取り付けるか修理するかして……。
――あ、そっか! ハチロクみたいなクルマだと、エアコンは壊れてたり外されてたり場合が多いわけですね?
鎌田社長―おっしゃるとおりです。こういったメニューをこなす時点で、つまり「普通に乗れる状態にする」という最低限の時点で、すでに500万円ぐらいにはなってしまうんですよ。これが、「350万円で買えないか?」というお問い合わせに対して「すみませんが最低でも500万円ぐらいにはなります」とお答えせざるを得ない理由です。
――ううむ……。
鎌田社長―ここが最低のラインであり、そのほか「内外装をキレイにしたい」「チューニングもしたい」などといったユーザー様それぞれの意向があるなら、そのご予算も必要になってきます。
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