ダイハツのモータースポーツ活動が積極的だ。コペンをWRCラリージャパンに送り込んで話題になったが、ターボを付けたミライースやロッキーの存在も忘れてはいけない。その仕上がりをレーシングドライバーの中谷明彦氏がレポート!!
※本稿は2025年1月のものです
文:中谷明彦/写真:森山良雄
初出:『ベストカー』2025年2月10日号
5速MT×ターボを搭載した爆速ハッチバック
ダイハツ・ガズーレーシングは、すでにモータースポーツ向け車両を製作し、ラリーを中心に活動をしている。
その一環としてミライースをベースに仕立てたラリー仕様車と、コンパクトSUVであるロッキーがベースのラリー仕様車に試乗する機会が訪れた。
場所はスパ西浦。近年のラリーは高速化し、SS(スペシャルステージ)はオフロードだけでなく舗装されたターマック路も多い。つまり、オン/オフ両方の性能が求められるのだ。
まずはミライースのラリー仕様車。エンジンを始動して走行を開始。クラッチは軽く操作でき、電動パワーステアリングも備わっていてピットロードでの操作性は問題ない。ただブレーキはノンサーボ。アシストがないので低温では利かないし、かなり踏力が必要だと感じた。
加速しながらコースインし、第1コーナーに向けステアリングを切り込もうとすると、なんと電動アシストが利いていない。電動モーターの容量が小さく、機械式LSDによる操舵抵抗が大きいのでフェイルセーフが入ってしまうようだ。
重いステアリングを回しても向きは変わらない。外輪の回転数がLSDで内輪にも伝わってしまうので、内輪差が吸収されず曲がらないだけでなく抵抗も大きい。
実はこういった乗り味は、オフロードを走行するラリー車の常識的なセットアップで引き起こされる。LSDで拘束力を強め、とにかくアクセル全開でパワーをかけ、トラクションをかけながら進行方向へ向かわせる。
サイドブレーキを引いたり、フェイントモーションなど派手なアクションを加えて乗りこなすのだが、そこまでのパワーは出ていない。このハンドリングでターマックの細い林道を走るのは大変だ。
これならノーマルデフでパワステアシストを得たほうが乗りやすく速いはず。コースがダートメインか、ターマック主体かでセッティングはわかれるだろうが、改良すべき課題は多い。
【画像ギャラリー】おもしろそうなことやってんなあ……モータースポーツ向けに牙を研ぐダイハツ車たち(19枚)画像ギャラリー小型SUVとは思えない驚異のポテンシャル
続いては、ロッキー。こちらは1Lターボでブースト圧を高めており、パワーは軽自動車の倍ほどもあるだろう。また電子制御カップリングを備えた4WDを採用している点もラリー向きだ。
さらに、ラリー車専用アイテムとして電子制御のカットオフスイッチが備わっており、介入を防止。サーキットでも有効に機能した。
4WDは加速時に4輪トルク配分が均等化され、ステアリングを操舵しても配分は変化しない。ターマックを考えるとステアリング操舵角に応じた前後配分を可能とするのが、今後の課題だ。
短い直線で到達した最高速度はミライースが115km/h程度。ロッキーは134km/hに達していて速い。小さなミライースは今後の熟成が重要だが、ロッキーはすでに戦闘力が高そうだ。
最小クラスを盛り上げる存在として、今後注目を集めることになるだろう。ラリーで磨かれた技術が、市販車にもフィードバックされることで、理想的なモデルが誕生する。そんなサイクルを期待したい。
【画像ギャラリー】おもしろそうなことやってんなあ……モータースポーツ向けに牙を研ぐダイハツ車たち(19枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方