日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向け、2035年までに乗用車の新車販売をEVやハイブリッド車など電動車100%にする目標を掲げている。これにより、モーターを併用しない「純ガソリン車」の新車販売は2035年をめどに終了となるが、それでほんとにいいのか、考察してみた。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部
純ガソリン車がどんどん減っているけど、それでいいの?
最近はモーター駆動を併用しない純粋なエンジン車が減った。例えば日産のノート/エクストレイル/キックスは、今はハイブリッドのe-POWERのみを搭載する。モーターを使わないノーマルガソリンエンジン車は選べない。
トヨタについても、カローラのセダン/ツーリング/スポーツは、現行型の発売時点ではノーマルガソリンエンジンを用意していたが、今はハイブリッドのみだ。SUVのカローラクロスも、GRスポーツを除くと全グレードがハイブリッドを搭載する。
トヨタのクラウンクロスオーバー/スポーツ/エステートも同様で、ハイブリッドとPHEV(充電可能なハイブリッド)が中心だ。クラウンセダンにはハイブリッドと燃料電池車があるが、いずれもノーマルガソリンエンジン車は選べない。
なぜ最近はノーマルガソリンエンジン車が減り、ハイブリッドが増えたのか。この背景には複数の理由がある。
まずハイブリッドの燃費性能が優れているのは当然として、最近は量産効果に伴うコスト低減も進み、以前に比べてハイブリッドの価格が下がった。以前はハイブリッドの価格がノーマルガソリンエンジン車に比べて50万~60万円高かったが、最近は価格差を35万~40万円に抑えた車種が増えている。
例えばノーマルガソリンエンジンを廃止する前のカローラクロスは、ハイブリッドの価格アップが35万円だった。しかも購入時に納める税額は、ハイブリッドが約10万円安く、実質的な価格差は約25万円に縮まった。
そのためにレギュラーガソリン価格が1L当たり150円の場合、約6万kmを走ると、燃料代の節約で実質価格差の約25万円を取り戻せた。
そしてハイブリッドは、モーター駆動の併用で加速が滑らかでノイズも小さく、燃費以外の付加価値も多い。そこまで考えると、ノーマルガソリンエンジンとの実質価格差が約25万円で6万kmを走れば取り戻せるなら、多くのユーザーにとってハイブリッドが買い得と受け取られる。
その結果、ハイブリッドは売れ行きも好調で、カローラクロスでは全体の80%以上を占めた。カローラセダンやツーリングでも、ハイブリッド比率が高く、ノーマルガソリンエンジン車は整理されていった。
またノーマルガソリンエンジンの廃止には、二酸化炭素の排出抑制を目的にした燃費規制も関係している。「2030年度燃費基準」を達成するには、企業(メーカー)別平均燃費を2016年度に比べて30%以上も改善する必要がある。そのためには、燃費性能の優れたハイブリッドやPHEV、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率を増やさねばならない。
ジャパンモビリティショー2025では、ダイハツが「Kビジョン」の名称で、軽自動車のハイブリッドを参考出品していた。開発者は「2030年度燃費基準をクリアするためにも、燃費の優れた軽自動車のハイブリッドが必要になる」と述べた。
小型/普通乗用車がノーマルガソリンエンジンを廃止してハイブリッドのみにする背景にも、2030年度燃費基準がある。ダイハツの場合、ターボエンジンを搭載するスポーツカーのコペンを今後も存続させるようだが、そのためには燃料消費量の少ないハイブリッドも用意して、燃費のバランスを取る必要が生じる。
見方を変えると、2030年度燃費基準をクリアするには、企業別平均燃費を悪化させるノーマルガソリンエンジン車が売れ過ぎては困る事情もある。そこでハイブリッドを存続させて、ノーマルガソリンエンジンを廃止する傾向も生じてきた。
スズキでは、ジムニーノマドの受注が2026年1月末まで停止している。受注停止の理由は、日本仕様の生産規模が国内需要に追い付かないためだが、燃費性能も良くはない。直列4気筒1.5Lエンジンを搭載して、4速AT仕様のWLTCモード燃費は13.6km/Lだ。
ちなみにスズキスイフトの2WDでは、マイルハイブリッド装着車でなくても、直列3気筒1.2Lエンジンを搭載して23.4km/Lだ。ジムニーノマドの燃料消費量はスイフトの1.7倍だから、これが大量に売れると、2030年度燃費基準の達成で不利になる。こういった事情もあるから、今後は電気自動車を含めて、2030年度燃費基準で有利な車種に特化してラインナップされるようになる。








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