最新SUVでは8速ATや10速ATも珍しくない。それなのに、2026年登場のランドクルーザーFJが選んだのは「6 Super ECT」と呼ばれる6速ATだ。時代遅れにも見えるが、そこには燃費や加速性能より、悪路での扱いやすさと信頼性を優先するランクルならではの判断がある。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】シンプルながらカッコイイ、ランクルFJの運転席を大公開!(7枚)画像ギャラリー8速でも10速でもなく、あえて実績重視の6速AT
ランドクルーザーFJは、最高出力163ps、最大トルク246Nmを発生する2.7L直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンに、トルクコンバーター式の電子制御6速ATを組み合わせる。
ランドクルーザー250のディーゼル車が8速AT、ランドクルーザー300が10速ATを採用する時代に、新型車が6速というのは少々地味だ。段数を増やせばエンジンの効率がいい回転域を使いやすくなり、加速の滑らかさや高速燃費の向上も期待できる。
それでもFJが重視したのは、数字上の新しさではなかった。
トヨタは2.7Lエンジンと6速ATの組み合わせについて、スムーズな走行性能と高い信頼性を備えると説明している。FJが目指すのは、舗装路だけを快適に走るSUVではない。砂漠や泥道、急坂などでも確実に動き、無事に帰ってくることが求められるランドクルーザーなのだ。
もちろん、変速段数が少なければ必ず壊れにくいという単純な話ではない。耐久性は部品の強度や潤滑、冷却、制御などによって決まる。ただし、十分な使用実績を持つエンジンとATを組み合わせ、複雑さを必要以上に増やさない設計は、世界各地で長期間使われるクルマにとって大きな安心材料となる。
修理設備や部品供給が充実した都市部だけでなく、整備環境が限られる地域まで想定するのがランクル流である。最新技術を詰め込むことより、長く使われてきた仕組みを磨き込む。その考え方は、20年以上の搭載実績を持つ2TR-FE型エンジンとも共通している。
6段でも変速比幅は広い! 悪路ではむしろ扱いやすい
では、6速ATだから走りに不満があるのか。各ギアの変速比を見ると、FJが必要とする領域はしっかりカバーされている。
1速の変速比は3.600と低く設定され、重い車体を滑らかに発進させる。6速は0.580というハイギアードな設定で、高速巡航時のエンジン回転を抑える。1速から6速までの変速比幅は約6.2倍あり、発進から高速道路まで対応できるワイドレンジ仕様だ。
さらにFJには、通常走行用の「H」に加えて悪路用の「L」を持つ副変速機が備わる。ローレンジの副変速比は2.566。1速と組み合わせれば駆動力を大きく増幅し、アクセルを強く踏み込まなくても急坂や岩場をゆっくり進める。
この「ゆっくり、確実に動かせる」ことが本格四駆では重要だ。ギアが細かく切り替わることより、ドライバーが狙った速度を保ち、タイヤへ安定して駆動力を伝えられることが求められる。
滑りやすい路面で2速発進する「2nd START」も備える。発進時の駆動力をあえて抑え、雪道や泥道での空転を減らす機能だ。シーケンシャルシフトマチックを使えば、下り坂で任意のギアを選び、エンジンブレーキを効かせることもできる。
弱点もある。ギア間の間隔は8速ATや10速ATより広くなりやすく、変速時にエンジン回転が大きく変化する。2.7L自然吸気エンジンの効率も最新ユニットには及ばず、WLTCモード燃費は8.7km/Lにとどまる。高速道路で力強く加速したい場面では、163psという出力不足も感じるだろう。
しかしFJにとって、6速ATはコストダウンだけの選択ではない。通常走行では6段を広く使い、悪路では副変速機で力を増幅する。必要な機能を手堅くまとめ、故障リスクや整備性まで考えた組み合わせなのである。
変速段数の多さが高性能の証しなら、FJの6速ATは目立たない。だが、過酷な環境でも正確に働き、長く使い続けられることも立派な性能だ。ランドクルーザーFJは「最新だから採用する」のではなく、「信頼できるから採用する」。その潔さにこそ、ランクルらしさが表れている。
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