ガソリン車やディーゼル車といったエンジンのみを搭載するクルマに、停止中エンジンを止める「アイドリングストップ」が当たり前の装備になって久しい。
アイドリングとは、停車時など車は走行していないけれどエンジンが稼働しているような状態を指し、その際エンジンを停止させる機構がアイドリングストップとなる。
燃費向上に寄与するなどメリットも多い機構なのだが、最近になってトヨタの新型ヤリス(ガソリン車)など、あえてアイドリングストップを付けない車も登場してきている。
当記事ではアイドリングストップの効果に加え意外な盲点などを考察していく。
文:永田恵一、写真:マツダ、トヨタ、ダイハツ
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エコカー減税をきっかけに普及したアイドリングストップ
アイドリングストップが普及した最大の理由は、当然ながら無駄な燃料消費をなくし、燃費を向上させるためなのだが、特に日本車でアイドリングストップが普及したのには大きな背景もあった。
それはリーマンショックによる景気低迷の対する景気刺激策として2009年に始まったエコカー減税である。
初期のエコカー減税は、星4つと呼ばれた従来の排ガス規制に対し、さらに排ガスが75%クリーンなことを前提に、車重ごとの燃費基準を上回った割合に応じて、重量税と取得税、翌年の自動車税が軽減されるというものだった。
特に当時はエコカー減税がクルマを選ぶ際の重要なポイントだったこともあり、メーカーが対象車を増やしたかったのは当然だ。
加えて初期のエコカー減税は、基準が現在に比べるとだいぶ甘かったこともあり、「もう少し頑張れば(エコカー減税対象に入る)」というクルマも少なくなかった。
アイドリングストップはそうした際に「最も手っ取り早い手段」だったこともあり、2010年代に入って一気に普及したのもよく理解できる。
アイドリングストップでどのくらい燃費は向上するのか
まず、カタログに載る公式なデータを見てみよう。
現在は同じエンジン、トランスミッションでアイドリングストップがある仕様と無い仕様がある車種は非常に少なく、アルファード/ヴェルファイアの2.5L(FF)車と1.5Lエンジンを搭載するロードスターのMT車くらいだ。
(※オプション価格はアルファード/ヴェルファイアが蓄冷エバポレーター含め5万7200円、ロードスターが減速エネルギー回生機構含め8万8000円)
総合燃費に加え、高速モード、郊外モード、市街地モードという走行パターンごとの燃費も発表されるWLTCモード燃費はそれぞれ【表】の通りだ。
このように停止がない高速道路ではほぼ変わらず、信号の少ない郊外路では僅かに良い、ストップ&ゴーが多い市街地では10%ほど向上、総合すると5%ほど向上するといったところだ。
もうひとつ、筆者が約5年前に『ベストカー』で比較的流れのいい東京都内の市街地を同じコースで25kmずつ走って、アイドリングストップあり/なしで燃費を計測したデータを紹介すると、燃費は過ごしやすい気候のなかエアコン使用で、アイドリングストップあり=23.2km/L、アイドリングストップなし=20.8km/Lと、市街地での向上はやはり約10%だった。
この2つのデータを総合すると気候のいい時期であれば、アイドリングストップによる燃費の向上は市街地で10%、総合すると5%というのが基準となるところだろう。
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