2020年に入り、あのプリウスが失速している。現行の60系プリウスがデビューしたのは2015年12月。翌年の2016年は、登録車販売台数で1位(驚異の24万8258台)、2017年も1位、2018年はノートとアクアに続く3位となったが、2019年には再び1位(12万5597台)に返り咲く、など、プリウスは、言わずと知れた、トヨタのメガヒットカーだ。
しかし2020年に入ると、その勢いが徐々に衰え始め、とうとう2020年6月度の登録車販売ランキングでは11位と、トップ10から脱落してしまった。
なぜプリウスは失速してしまったのだろうか。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA
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プリウスが失速したワケ
2020年6月の登録車販売ランキングを見ると、1位が2019年11月に登場したライズ、2位は2月に登場したヤリス、3位はカローラ、4位はフィット、5位にはなんとアルファードがランクインしている。
プリウスが失速した要因として考えられるのが、「ヤリスとフィット」という、手ごろなコンパクトカーの登場、そして「コロナ禍」の影響だ。
これまでプリウスを選んでいた顧客が、コロナ禍による不安や、経済状況の変化によって「より手ごろなハイブリッド車を」ということで、50万~60万円ほど安い、ヤリスやフィットへと流れてしまったのではないか、ということだ。
これまでは「ハイブリッドといえばプリウス」と思い込んでいた顧客にも、「ハイブリッド車でもほかの選択肢もある」という認知が広まった、ということであろう。
プリウスは十分に役目を果たした
この10年間で、ハイブリッドシステムを搭載するモデルは、一気に増えた。
アクアやフィット、ノートe-POWERといった200万円台のコンパクトカーから、ノア/ヴォクシー、ステップワゴン、セレナといった300万円台のミディアムクラス、さらには400万円超えの高額車まで、あらゆるジャンルとボディ形式で、ハイブリッドが登場している。
プリウスは「ハイブリッド車の認知度を広げる」という大役を、すでに十分に果たしてくれた。プリウスの販売が落ちてしまったとしても、ヤリスを筆頭に、カローラ、ヴォクシー、アルファードといったトヨタのハイブリッド軍団が、受け皿として待ち構えている。
しかもそれらは、他社車のシェアも奪いつつあり、すでにトヨタの国内シェアは50%に近いところまで来ている(軽を入れると約30%)。
プリウスは、人気車であるがゆえ、一部SNS等で悪しきイメージで騒がれてしまっているが、TNGAによる新型プラットフォームを使った現行型プリウスは、非常にいいクルマだ。
そして、そのTNGA構想が、ヤリスのようなコンパクトカー向けのGA-Bプラットフォームから、レクサスにも使われるGA-Lプラットフォームまで、という、幅広い車種に織り込まれていくことを考えれば、トヨタの底力を実感せざるを得ない。
実際、前述した2020年6月の登録車販売台数ランキングでは、トップ5のうち4台がトヨタ車だ。プリウスが失速していても、ライズやヤリスが売れていれば(もちろん車種によって利幅の違いはあるだろうが)、トヨタとしては、それでいいわけであって、プリウスは失速したかもしれないが、トヨタ全体で見れば、今が絶好調なのだ。
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