クルマには今後もフルモデルチェンジを重ねて継続して売られる車種と、次期型の開発が不明瞭な車種がある。後者には試験的に開発された、いわば刹那的な商品も含まれる。
今はエンジンやパワーユニットも変化も激しく、電気自動車やプラグインハイブリッド車が登場する一方で、乗用車に搭載されるV型8気筒エンジンは世界的にも減少傾向にある。
日本車では次期レクサスLSがV型8気筒を廃止して、V型6気筒のツインターボに置き換わる。V型12気筒のセンチュリーは車種自体が生産を終えた。
以上のような絶滅が心配される車種、V型8気筒エンジン搭載車などは、悠長にしていると新車では買えなくなる。そこで「一生に一度は乗っておきたい現行国産車」を取り上げたい。
文:渡辺陽一郎
写真:HONDA、SUZUKI、TOYOTA、SUBARU
■ホンダ S660 現行型2015年3月発売
筆頭はホンダS660だ。文字通り660ccエンジンを搭載した軽自動車の2シータースポーツカーで、座席の後ろ側、つまり車両の中央にエンジンが位置するミッドシップレイアウトになる。
2名で乗車すると手荷物の収納にも困るほどだから、実用性はきわめて低いが、運転すると抜群に楽しい。全高が1180mmという低重心のボディだから、全幅が1475mmにとどまる軽自動車でも走行安定性が優れている。
また全幅が狭いため、街中のちょっとしたカーブでもアウト・イン・アウトのラインを取れて、日常的な移動の中でスポーティドライブを味わえる。
発売当初は納期が約1年に伸びたが、今は1か月の販売台数が200台前後に下がったから購入しやすい。一種のアイデア商品とあって長期的に生産される可能性は乏しく、興味があるなら今のうちに買っておきたい。
■スズキ アルトラパン 現行型2015年6月発売
同じ軽自動車では、性格はまったく異なるがスズキアルトラパンも注目される。3代目の現行型は堅調に売れているが、2002年に初代モデルが登場した頃の「癒し」を求める世相はもはや薄れた。今のアルトラパンの路線はそろそろ終わりかも知れない。
それでも、ゆっくりと走りたい気分にさせるアルトラパンの個性は貴重だ。日産キューブも少し似ているが、アルトラパンはインパネを木目調のテーブル風に仕上げたり、その下側に引き出し式の収納設備を装着するなど工夫が細かい。
落ち着いた色彩も用意され、男性が使っても不似合いなクルマではない。
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