トヨタが誇るラージミニバン、アルファード。クルマ業界が大きくダメージを追っているコロナ禍の影響をものともせず、昨年の販売実績を上回る売れ行きを見せている。今年5月に行われたトヨタ系列販売店統合の効果もあり、7月の販売台数は8448台と、売れ筋のコンパクトカーたちに迫る勢いだ。
また、以前はヴェルファイアのほうが人気だったのだが、現在その状況は逆転し、2019年はなんと1.9倍もアルファードのほうが多く売れている。
これほどまでにアルファードが人気となった理由とはいったい何だろうか。アルファードの強みと、気になるところを分析してみた。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA
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転機は2018年のマイチェン
現行型アルファードは2015年に発売された、3代目だ。アルファードは、2代目へとモデルチェンジをしたタイミングで、法人顧客の多いトヨペット店の専売ブランドとなったこともあり、2代目までは、フロントマスクは比較的落ち着いた雰囲気を持たせていた。
対照的に、若者や女性をターゲットとしたネッツ店専売モデルのヴェルファイアは、艶やかで派手なフロントフェイスとし、存在感の強い路線を邁進した。その結果、ヴェルファイアは狙い通り若者の支持を得て、販売台数を伸ばしたが、転機は2018年のマイナーチェンジで訪れた。
2018年のマイナーチェンジで、アルファードは、大人しい印象のフロントマスク(とはいえ縦型グリルはメッキでギラギラだったが)から方針転換し、ヘッドランプ内をブラックアウトと細目化を行い、フロントグリルもブラック基調にしながらも、メッキの縦ラインを入れ、ブラック塗装とメッキをうまく組み合わせたフロントグリルとなった。
これにより、アルファードは、清潔感とチョイ悪の要素が混ざったフロントフェイスとなった。特に、エアロ仕様による厳つさが引き締まって、程よくカッコよい。
ヴェルファイアのほうはというと、2018年のマイナーチェンジで、メッキエリアをフロントのサイドエリアまで拡大し、横に引かれたサイドグリルのデザインと相まって、ますますギラギラ感が増したフロントフェイスとなった。この結果、程よいバランスに変化したアルファードの方が、顧客に受けることとなったのだ。
「背の高さ」からくるオーラが、最大の魅力
アルファードは、クルマ全体のスタイリングから溢れる「威厳」が、他社車を圧倒している。その「威厳」の主な要因は、背の高さにある、と思われる。
クルマは一般的に、背が高くなればなるほど、走行性能に支障をきたす。横風の影響を受けやすくなるし、コーナリングではボディが揺すられ、不安定さが増す。また、空気抵抗も増えるため、燃費も悪くなる。そのため、自動車メーカーとしてはやはり「クルマは背が低くなければ」と考える。
ホンダのオデッセイや、かつて存在したエリシオン、そして日産のエルグランドは、これらの背高による弱点を重視し、ミニバンであっても背が低いほうがよいと考えた。背が低くても、室内空間は最大限確保できるよう、技術とアイディアで乗り越えつつ「背が低いミニバン」を目指したのだ。
しかしアルファードは、背高であることのメリットのほうを重視した。背高によるデメリットに対しては、リアのサスペンション形式を変更したり、トレッドやホイールベースを広げたり、軽量化をしたりと、できる限りの対策を行った。
そのためアルファードは、でこぼこした道でボディが左右にユサユサと大きく揺れることはあるが、大らかなボディモーションとなるように、乗り心地がコントロールされている。また、ハンドルもグイグイ切れ込むようなセッティングではなく、ゆったりとしたギア比にされている。
さらには、据え切りから高速走行まで、ステアリング操舵力は軽めのため、操舵感が感じにくい。やはりハンドリング性能は、アルファードの弱い点であろう。
ただ、高速直進性はしっかりと確保されている。優秀な先進運転支援の恩恵もうけ、乗り心地の雰囲気と合わさって、「アルファードの持ち味なのでこれで良いのだ」、と納得させられる世界観があるのが、アルファードだ。
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