昨今はSUV人気が高まりつつある日本市場ではあるが、ミニバン人気もいまだ健在だ。ミニバンが支持される理由としては、広大な室内空間や運転のしやすさなどが挙げられるが、「スライドドアであること」も大きなポイントであろう。
近年のミニバンが装備しているスライドドアは、両側スライドは当たり前、パワースライドの機能も年々進化し、リモコンで開閉操作ができたり、ドアが閉まり切る前にロック操作ができる予約ロック機能も登場、2020年11月に登場した改良型オデッセイには、ジェスチャーで開閉ができる機能が標準搭載されている。
このように、超絶便利なスライドドアではあるが、スライドドアには、弱点もある。今回は、このスライドドアのメリットとデメリットについて考えていく。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN
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メリットは乗降のしやすさ
スライドドアのメリットとして、もっとも大きなポイントは、後部座席への乗り降りのしやすさだろう。ボディ側面に沿って開閉することで、車両横方向への張り出し量を少なくできるため、狭い場所でドアの開閉に困ることなく、クルマから降りたあとの移動にも困らない。
通常のヒンジタイプのドアのクルマで、身体をくねらせながら乗り降りした経験が、皆さんも一度はあるだろう。お子さんが不意にドアを開けて、隣のクルマにドアパンチしてしまう危険も、スライドドアなら、ない。
また、手すりを掴みながら、椅子から立つようなしぐさで乗り降りができるため、足腰の弱ったシニアや、妊婦、和服、ドレス姿であっても乗り降りがしやすい。3列目席の乗り降りは、開口部が広くとれるスライドドアの方がしやすい。
デメリットは「燃費」と「振動」
最大のデメリットは、スライドドアは、ヒンジドアと比べて面積が広いため、どうしても重たくなることだ。重いスライドドアが自重でたわまないよう、ある程度の補強も必要であり、重量増加は燃費に影響する。
ちなみに、ドア開口部が大きいスライドドアのクルマは、ヒンジドアのクルマに比べて操縦安定性が劣る、と思われがちだが、実はそんなことはない。コーナリング時には、スライドドア自体が開口部で突っ張るように働くので、さほど問題にはならない。
また、側突に対しての安全性も、ドア自体の補強を兼ねて、サイドインパクトに対応する梁を内部に仕込めるため、スライドドアだから「ダメ」、といったことは原則ないので、安心していただきたい。
しかし、開口部が大きいことによるデメリットはある。車体の微振動だ。スライドドアは、通常のヒンジドアよりも、ドア開口部が大きいことによるボディがよれる動きは、どうしても大きくなってしまう。
レーンチェンジのような大きな車体入力では、前述したようにスライドドア自体が開口部で突っ張るように働くので、問題にはならないのだが、小さな凹凸があるざらついた道などで、車体自体が震える微振動を起こすことがある。
そうなると、大きな開口部が弱点となり、車体が共振することで、2列目シートやフロア、ピラーなどが「ブルブル」「ワナワナ」と、嫌な振動を生じることがあるのだ。
当然、自動車メーカーでも課題を把握し、対策を講じてはいるが、スライドドアを採用するクルマは、車体構造の原理上、ある程度は避けられない。余談だが、こうしたNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の消し込みは、クルマの開発の最終段階でもっとも悩まされる課題のひとつだ。筆者もかなり苦労した経験がある。
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