フランスのルノー本社は2020年11月12日(現地時間)、MPV(マルチパーパスビークル)の定番モデル、新型カングーを世界初公開。
歴代のルノー カングーといえば「おしゃれ系輸入MPV」の代表格。日本でもシンプルな道具っぽさが受け、ルノーにおける販売の中心的存在となっている。
さて、今回初公開された通算3代目の新型カングーだが、そのデザインはこれまでと少し趣が異なるようにも見える。果たして新型でもカングーらしさは健在なのか? 初代カングーのオーナーでもあった筆者が解説する。
文/伊達軍曹、写真/RENAULT、CITROEN
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「おしゃれな輸入MPV」の定番、カングーが通算3代目に刷新
まずは新型ルノー カングーの概要と、カングーのこれまでのヒストリーを簡単にまとめておこう。
1960年代の「4F(キャトル フルゴネット)」と1980年代の「Express(エクスプレス)」をルーツとする初代カングーが登場したのは、1997年(日本上陸は2002年)のこと。
小ぶりで活発で荷物が積めて、そして「妙におしゃれ」に見える初代カングーはスマッシュヒットを記録し、2007年(日本では2009年)には2代目へとフルモデルチェンジ。
時代の要請により3ナンバーサイズとなってしまった2代目は、当初は今ひとつ不評だった。だがさまざまな改良と「慣れ」により、結局は初代同様の「おしゃれな輸入MPV」としてのポジションを確固たるものとした。
そして本稿冒頭のとおり2020年11月12日に本国で発表されたのが、3代目のカングーだ。
本国で発表された新型カングーは大きく分けて4タイプ。プレスリリースのトップに挙げられているのが、商用バージョンである「カングー バン」。
そしてその乗用バージョンとなるのが、2列シート5人乗りの「カングー」だ。このカングー バンとカングーにはEV版もラインナップされる。
新型カングー バンはピラーレス構造も採用
カングー バンには、Bピラーレス構造によって車体側面に1418mmもの大開口を実現させた「イージーサイドアクセス」機能を採用。
だが、このBピラーレス構造が乗用バージョンのカングーにも展開されるかどうかは、英語のリリースを読んだ限りでは不明。というか普通に読むと、乗用バージョンには適用されないように読める。
そして、商用バージョンとはいえそこそこゴージャスなカングー バンよりもハードコアで実用的な(そして安価な)商用バンとして作られたのが「エクスプレス バン」。
で、それに5座のシートを付け、乗用車的にも商用車的にも使えるミクスチャー系のMPVとしたのが「エクスプレス」である。
話題となっているのは、日本市場では主力となるはずの乗用バージョン「カングー」のデザインだ。
プレスリリースによれば、ルノーは新型カングーのエクステリアデザインについて「muscular(筋肉質)」であり、素敵な「chrome line(クロームメッキのライン)」がフロントマスクに配され、そしてボディサイドは「sculpted(彫りが深い)」と自画自賛している。
だが、ニッポンのカングー愛好家ならびに「おしゃれ系輸入MPV愛好家」の各位は、基本的には車のデザインに「筋肉質」、「クロームメッキ」、「彫りの深いシェイプ」など求めていない。
求めているのは、その真逆の「シンプル」「道具っぽさ」である場合が多いのだ。そうであるがゆえに、シンプルなギア(道具)っぽいムードが漂っていた初代および2代目のルノー カングーは日本でスマッシュヒットした。
そしてカングーより車格はやや上だが、同様に「シンプル系の美しさ」を備えて登場したシトロエン ベルランゴは、先行発売分があっという間に完売し、正式発売を早める措置を取るほどの人気となったのだ。
それなのになぜ、3代目のカングーは「彫りの深い筋肉質のキラキラ系」になってしまったのか?
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