GRヤリスのような本格的なスポーツモデルが発売される一方で、なかなか手軽な価格で楽しめるスポーツモデルが減ってしまっている。
そのうえでMTが選べるかどうかとなると、さらに選択肢が減ってしまう。
そんな中、楽しいハンドリングと高いコストパフォーマンスを兼ね備えるスポーツハッチバックが、スズキのスイフトスポーツだ。パンチのある1.4Lのターボエンジンを備えながら、価格は200万円ちょっと。
そんなスイフトスポーツの安さの秘密を解き明かす!
文/鈴木直也、写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】初代からまとめて見る!! 本文未掲載写真も!! 手頃な価格で楽しめるスイフトスポーツ
■最近のクルマは高い!? 充実装備が価格を上げる
最近のクルマは高くなったと嘆く人が多い。
たしかにそのとおり。衝突安全性能を重視し始めた頃からエアバッグやプリクラッシュ装備のコストが増え始め、最近はそれが自動ブレーキ標準化へエスカレート。ADAS系の装備はクルマの価格を20万円くらい押し上げたという説もある。
また、排ガス規制や燃費規制でエンジンまわりの補機類もどんどん複雑化。そこに電動化が加わるからもーたいへんで、軽自動車でもちょっとオプションを追加したら200万円オーバーが当たり前の時代になってしまった。
これはクルマ好きにとっても深刻な問題だ。
かつてはお手頃スポーツカーの代表だったロードスターはRSで約335万円。86も今ではGTリミテッドで約325万円。ちょっとオプションを加えたら、乗り出し400万円というのが相場だ。
デフレといわれる日本で、クルマは唯一コンスタントに値上がりし続けている商品。これじゃぁ、若者がクルマ離れするのも無理はないよね。
■安くて楽しい希望の星登場!!
そんな中、庶民の希望の星ともいえる存在がスイフトスポーツだ。
スイフトスポーツが人気車になったのは、2005年デビューの2代目ZC31型あたりから。以来、2011年のZC32型、2017年のZC33型とモデルチェンジして世代を重ねて来たが、その評価は尻上がりに高まるばかりだ。
ぼくもベストカー本誌で何度もスイスポについて書いているが、初代から一貫して「初心者からベテランまでお勧めできる最高のドライビングトレーナー」という評価に揺るぎはない。
ぼく以外のベストカー執筆陣も同意見の人が多いようで、名物ランキング企画で「FFスポーツベスト10」なんかやると、スイスポはまず1位か2位が定位置。まさに、コンパクトFFスポーツの偉大な定番といっても過言ではないクルマなのである。
かくもスイフトスポーツの評価が高い理由は、もちろん走って楽しいという部分にあるわけだが、パワー・ハンドリング・コントロール性、この3つの要素が絶妙にバランスしてる点を評価する人が多い。
1.4Lターボの140ps/23.4kgmというパワーは970kgという軽いボディには十分以上。先代までのNAエンジンよりチョイじゃじゃ馬になった加速感が楽しめるものの、そのパワーはけっして「過剰」という水準ではない。
初心者にも扱いやすいコントローラブルな操縦性もスイスポ伝統の美点だ。
現行モデルで海外仕様3ナンバーワイドボディを使ったのは好判断。トレッド拡大とボディ剛性アップが功を奏して、ターボ化したエンジンにシャシーが負けていない。
素直なステアフィールや軽快なフットワークという伝統のキャラクターはそのままに、骨太な手応えを感じさせるハンドリングに成長したとでも申しましょうか。大人になったなぁという完成度の高さを感じるのが現行スイフトスポーツの走りのテイストなのだ。
くわえて、いつの時代でも価格がお手頃なこと。これがスイスポのもうひとつ重要なポイントだ。
現行モデルでも6MTで価格は201万7400円。この中には、衝突被害軽減ブレーキはもちろん、誤発進抑制、車線逸脱防止、ブラインドスポットモニターなど、最新トレンドの安全デバイスが標準装備。6MTでもアダプティブクルーズコントロール (ACC)が備わるし、ATならそれが全車速追従タイプとなる。
この内容でこの価格。めちゃめちゃコスパが高いと思いません?
なんでスイスポはこんなにお買い得なのか? 正直いうとぼくにもこれは謎です。
軽自動車を主戦場とするだけに、スズキのクルマは普通車も昔からお買い得ではあった。しかし、初代スイフトの頃までは、普通車といっても軽の拡大版。安いけれど内容もそれなりという評価だったのだ。
ところが、2代目Z31型以降のスイフトは、欧州市場でも高く評価されているクルマに急成長。内容がどんどん良くなってるのに価格はあんまり上がらないんだから、評価が高まるのは当然だよね。
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