トヨタRAV4とホンダCR-Vという2台のSUVがある。初代はともに1990年代の「シティ派クロカンブーム」を牽引し、北米でも発売されて大ヒット、両車とも徐々にサイズアップしていって、いったん日本では販売終了となるものの、現行型で国内発売を再開したモデル。
出自もたどってきた経緯も、クルマとしてのコンセプトも共通点の多い2台ではあるが、しかし現在この2台には大きな販売格差がある。RAV4は売れまくっていて、CR-Vは苦戦中。なぜ差が開いてしまったのか。販売状況に詳しい渡辺陽一郎氏に伺った。
文/渡辺陽一郎 写真/トヨタ、ホンダ、ベストカー編集部、平野学
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■共通点が多いRAV4とCR-Vだが販売格差は約10倍
SUVには、コンパクトサイズからLサイズまで、さまざまな車種がそろう。この中心に位置付けられるのは、全長を4600~4700mm前後に設定したミドルサイズだ。車種も多く、今後フルモデルチェンジが予定されるアウトランダーやエクストレイルも、ミドルサイズに位置付けられる。
ミドルサイズのSUVには人気車が多いが、すべての車種が好調に売れるわけではない。明暗が分かれ、特に対称的なのはRAV4とCR-Vだ。
RAV4のボディサイズは、売れ筋になるアドベンチャーの場合、全長が4610mm、全幅は1865mmになる。CR-Vも4605mm・1855mmだからほぼ同じ大きさだ。
エンジンは、RAV4が2Lのノーマルタイプと、2.5Lのハイブリッド、それにPHV(プラグインハイブリッド)を用意する。CR-Vは1.5ターボと2Lのe:HEV(ハイブリッド)だ。
このように両車には共通点が多いが、売れ行きには大差がついている。
2020年の登録台数は、RAV4が累計5万4848台(1か月平均では4571台)なのに対して、CR-Vは6140台(1か月平均では512台)に留まった。2021年1月もRAV4が4162台、CR-Vは415台だから、両車の間には約10倍の販売格差がある。
■販売格差の大きな理由は「商品力」
この販売格差の背景には、複数の理由が考えられるが、最も大きな影響を与えたのは商品力の違いだ。両車とも前輪駆動ベースのシティ派SUVだが、RAV4はフロントマスクなどの外観が野性的で存在感も強い。駆動方式は前輪駆動の2WDもあるが、大半は4WDを搭載する。
特にアドベンチャーとG・Zパッケージには、後輪左右の駆動力配分を積極的に変化させるダイナミックトルクベクタリングAWDを搭載した。RAV4はシティ派SUVでありながら、ランドクルーザーのような悪 路向けのSUVに近い外観と機能を備える。
そして近年では、ハリアーやC-HRのような典型的なシティ派SUVが大幅に増えた反動で、ユーザーから飽きられ始めた。その結果、SUVの需要に原点回帰の傾向が生まれ、悪路向けSUVに近いRAV4の人気が高まっている。
同様の理由で本格的な悪路向けのSUVも注目され、ジムニーとジムニーシエラは根強い人気を獲得した。輸入車ではジープ・ラングラーも売れ行きを伸ばしている。
SUVにはインプレッサスポーツをベースにしたXVなどを含め、ひとつのカテゴリーの中に、さまざまな性格の車種が共存する。SUVの中でも流行の変化があり、今は悪路向けのSUVと、悪路向けに近いシティ派SUVが注目されているわけだ。RAV4はこの流れに乗ることができた。
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