EV(電気自動車)への本格シフトが現実味を帯びてきたことから、全国にあるガソリンスタンド(GS)の行く末に注目が集まっている。ガソリンの販売量が減少すれば、現在の販売網を維持できなくなるのは確実であり、EV時代には生き残りの新しい戦略が求められる。
文/加谷珪一 写真/Adobe Stock、NISSAN
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■EVシフトに伴ってガソリン需要の低迷は必至
全世界的なEVシフトによって、世界のガソリン需要低迷が予想されている。国際エネルギー機関(IEA)が2021年3月に公表した石油市場展望では「ガソリンの世界需要は2019年の水準に戻ることはない」と指摘。ガソリン販売はピークを過ぎたとの見方を示した。
これまでもガソリン需要がピークを過ぎているとの指摘はいくつかの調査機関から出ていたが、もっとも著名な組織のひとつであるIEAから需要減少という予測が出た現実は重い。日本は先進諸外国と比較して脱炭素に関する情報に格差があり、今でも脱炭素は理想論であるとの意見も根強い。だが世界の市場は想像を超えるペースで脱炭素化が進んでおり、電動化はすでに現実の話である。
2021年5月26日には、2050年までに脱炭素社会の実現を目指す「改正地球温暖化対策推進法」が参議院本会議にて全会一致で可決、成立した。これまでの脱炭素はあくまでも政権のビジョンでしかなかったが、法律に明記されたことで正式に日本の国策となった。与野党問わず、すべての党派がこの法案に賛成したのは、脱炭素をめぐる国際情勢が厳しさを増しているからである。
■ここ10年で1万カ所近くのガソリンスタンドが閉鎖された
もしこのペースで自動車のEV化が進めば、当然の結果としてガソリン需要は大幅に減少する。ピュアEVの場合にガソリンはまったく必要ないし、HV(ハイブリッド)が主流になったとしても、需要はざっと半分以下である。そうなるとGSの経営に大きな影響が及ぶのは必至だ。
実は脱炭素とは無関係に、国内のGSにはすでに大きな逆風が吹いている。それは、地方を中心とした過疎化と自動車保有世帯の減少である。
2010年時点で国内には約3万9000カ所のガソリンスタンドがあったが、2020年には約3万カ所まで減少した。過去10年は人口が減っているといってもほぼ横ばいだったが、2020年代からは人口の絶対数が急激に減り始める。地域の過疎化は想像以上のペースで進むだろう。
そもそも市場規模の縮小が確実視されていたところに脱炭素による需要減という要因が加わるので、よほど高収益を上げているGS以外は事業を継続するのが困難になる。GS数は今後10年で、一気に減少すると考えた方がよい。
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