2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す我が国において、自動車産業にもさまざまな動きが見られるが、ここにきて電動化「以外」のアプローチが注目されるようになってきた。
そのひとつがトヨタ自動車の水素エンジン車の開発だが、さる2021年6月18日に閣議決定された政府の「成長戦略フォローアップ」においてe-fuelが取り上げられ、具体的な商用化へのスキームについても言及されている。
そこには、
「CO2と水素を原料として製造される合成燃料(*e-fuelのこと)について、技術開発・実証を今後10 年で集中的に行うことで、2030 年までに高効率かつ大規模な製造技術を確立するとともに、2030 年代に導入拡大・コスト低減を行い、2040 年までに環境価値を踏まえつつ、自立商用化を目指す。(*編集補足/成長戦略フォローアップ案 カーボンリサイクルに係る産業項より)」
とある。菅義偉総理が今年の1月、国会で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明し、「カーボンニュートラル=電動化」というイメージが先行したが、成長戦略に掲げられるということはe-fuelの可能性を認めるもので、政府内でも様々な意見があることがうかがえる。
今回、政府に対してe-fuelの実用化推進の提言を行ってきた「カーボンリサイクル技術の推進及び需要創出のための議員連盟」の会長であり、自民党政務調査会 経済産業部会長、前環境副大臣でもある佐藤ゆかり衆議院議員に、e-fuelの未来と可能性について聞いてみた。
文/ベストカー編集部 写真/西尾タクト
■「日本は出遅れているのではないか?」
ベストカー編集部 本郷仁(以下、本郷) 佐藤さんは今回e-fuelの国内実用化について、政府に強く提言なさったそうですが、e-fuelに注目される理由を教えてください。
佐藤ゆかり衆議院議員(以下、佐藤) 私は一昨年環境副大臣に就任し、地球温暖化政策を担当しました。その際に世界が本気でパリ協定(2020年以降の地球温暖化対策の枠組み)を推進するなか、日本の政策は出遅れているのではないか? と正直感じました。
国内では集中豪雨によって大規模被害が続出し、気候変動対策に真正面から向き合わなければならない事態と決意しました。そのなかで日本がカーボンニュートラルを実現し、世界でリーダーシップを取るにはどうすればいいか? について考えた結果、ひとつの選択肢としてe-fuelの可能性に注目しました。
本郷 「日本の自動車産業において、カーボンニュートラルの実現には電動化戦略以外ありえない」という意見もありますが、どうお考えでしょうか?
佐藤 電動化がひとつの有効な手段であることは間違いありません。その一方で自動車産業には約550万人が従事し製造から販売、修理工場、ガソリンスタンドまで大きなピラミッド構造が構築されています。電動化一辺倒になれば、その産業構造は失われざるをえません。また、もしも電動化だけが残されれば、電池生産に必要なコバルトやリチウムといったレアメタルの調達はどうするのか? という深刻な問題も起きます。
e-fuelは内燃機関をそのまま使うことでカーボンニュートラルにアプローチできる経済産業上のメリットがあります。既存の設備と人、そしてノウハウを使いながら、新たな燃料開発のために投資し、研究開発を推し進めるほうがマクロ経済全体の視点で見た場合、より効率的であり、理にかなっていると思います。
政府が2035年までに新車販売すべてを電動化すると発表した際、自工会会長の豊田章男さんが猛烈に反論されましたが、私は心からサポートしておりました。またトヨタの社長として、水素エンジン車を開発し、自らがレーシングカーを運転されたことは大きなニュースになりましたが、私はそれを誇らしく拝見しました。水素エンジン車もe-fuel同様、既存の内燃機関をほぼそのまま使えるという利点があります。
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