かつて、多くのスポーツカーに装備されていた、ボンネットのエアインテーク、またはエアアウトレット。「ボンネットにエアインテーク、エアアウトレットがある=排熱が必要な高性能車」ということから、機能として必要であることはもとより、「存在自体がカッコいい!!」とされてきた。
だが、昨今の高性能スポーツカーでは、ド派手なエアインテーク、エアアウトレットが徐々に減りつつあり、あっても小さな形状になっていることが多く、リアウイングと同様、その効果のほどには疑問を抱く方も多いようだ。
そこで、改めてボンネットに大きな穴は本当に必要なのか、最新の空力事情とともに、ご紹介していこう。
文/吉川賢一
写真/トヨタ、日産、ホンダ、スバル
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■緻密なシミュレーションができるようになったことで、必要性がなくなった
緻密な空力設計が難しかった時代は、エンジン廃熱のため、ボンネットのエアインテークは必須とされてきた。空気の流れを正確に知ることができなかったため、とりあえず開けておく必要があったのだ。
しかし現在は、シミュレーション技術が進化したことで、エンジンルーム内の空気の流れを緻密にコントロールすることが可能となり、廃熱のしくみを緻密に設計できるようになった。
たとえば、FK8型シビックタイプRでは、フロントグリルから取り込まれ、ラジエーターを通過した熱い空気を、アルミボンネット上に設定したインテークダクトからの走行風によって、車外へ放出している。
そもそも、ボンネット上を流れる空気の一部を分断するような大きなエアインテークは空気抵抗となるため、必要ないのであれば装備しない方が、空気抵抗が低減でき、燃費に貢献できる。
レヴォーグや新型WRXのように、水平対向エンジン特有のレイアウト上の都合(インタークーラーの冷却用)などで、エアインテークありきのエンジンルーム内レイアウトがなされている場合もあるが、シミュレーションの進化によって空気の流れをコントロールできるようになったことで、ボンネットのエアインテークは必須アイテムではなくなったのだ。
また、エンジンルームは、キャビン(乗員がいる空間)ほど密閉されているわけではないので、冷却に使用した空気は、自然と隙間から抜けていく。その空気の抜き方によっては、空気抵抗を下げることもできたり(燃費が改善する)、高速走行時の直進性を上げることも可能だ。
空気をどのように取り入れて、どこから抜くか、各メーカーで少しずつ方策が異なるため、見ていて面白いポイントだ。
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