自動車メーカーの子供向けバーチャル工場見学サイトが超おもしろい!


 コロナ禍で子供が学校で課外学習を行うことが難しくなり、これまでリアルで行われてきた「社会見学」をオンラインで行うサービスを提供する企業が増えた。アクションカメラやドローンの普及で、これまで不可能だったアングルからの撮影も可能になり、バーチャル工場見学のクオリティも確実に高くなってきている。

 自動車メーカーのバーチャル工場見学サイトも例外ではなく、子供だけでなくクルマ好きの大人が見ても十分に、いや、非常に楽しめる内容になっている。

 そこで、トヨタ、日産、ホンダ、三菱、スバルの各社のバーチャル工場見学サイトを実際に端から端まで全部見た筆者が、おもしろいと思ったサイトから順番に、見どころをまとめて紹介していこう。

文/柳川洋
写真/トヨタ、日産、ホンダ、三菱、スバル

【画像ギャラリー】各社のバーチャル工場見学を画像でチェック!


■ホンダ「クルマができるまで」

クルマができるまでの6工程を詳細にわたって解説。大人が見ても感心する内容だ(出典:ホンダ)

「ホンダのクルマができるまで」

 ホンダのバーチャル工場見学はかなり臨場感が高い。ロボットの動作音や軍手でボディを撫でる音もくっきりと聞こえるぐらい音質がいいうえに、画質も編集のクオリティも高いので相当没入感があるバーチャル体験ができる。

 細かい工程をしっかり見せてくれるので、オトナにも非常に勉強になる。例えば「切り出された鉄の板はHonda専用の「5700トン サーボプレスマシン」というプレス機で、圧力をかけ、立体的なボディの部品に一気に成形します」などという説明を読むと、子供向けに手加減して作ったのではなく、本気出して作ったものを見てほしい、という想いが伝わってくる。

 動画だけでなく、立ち止まって製造工程の詳細を確認できる写真や解説もふんだんに盛り込まれている。

 製造工程のポイントポイントに用語辞典があり、わからない用語を調べたり、知っている用語でもきめ細かい解説が加えられていて「こんなこと知らなかった!」と驚かされる。塗装工程での塗料の色の切り替え方法について説明しているコラムなど、ついつい読み込んでしまう。

 だが、やはりホンダといえばエンジンだ。そこをちゃんとわきまえてか、エンジンづくりの工程には他のセクションよりも力が入っているのが伝わってくる。

アルミ合金製のエンジン組み立て工程。クランクシャフトやピストンなどの組み立てシーンは大人でも非常に興味深いのではないだろうか(出典:ホンダ)

 660度以上の熱でアルミ合金を溶かし、圧力をかけてエンジンを鋳造していくとか、エンジン加工の際にドリルの摩擦熱で加工精度が安定しなくなるために切削油を使うとか、機械加工前と加工後のエンジンの違いを写真で確認できる、など説明はかなりマニアックだ(褒めてます)。

 実際に工場見学に行ったら危険すぎて見ることのできない、クランクシャフト・カムシャフトの焼入れを「撮影のため特別に許可を得て安全柵を外しております。」というテロップ付きで、バーチャルならではのカメラアングルで真近で見られる。作業者が熟練の手つきでシリンダーブロックにピストンを挿入するシーンも見られる。とてもいい。

機械による加工が終わった加工物は、高熱で焼かれ、浸炭(しんたん)処理が行われる。この処理は熱によって表面をより硬くして、耐久性をアップするために行われる(出典:ホンダ)

 ミクロンレベルでエンジン部品の浸炭深度や表面・内部硬度、表面・内部組織を検査するシーンでは、検査中のPCのスクリーンの写真まで見られてしまう。企業機密的に大丈夫なのだろうかと、こちらが心配になってしまうほど情報量が多い。

 車体組立工程の動画から受けた印象だけだが、ライン作業の緊張感は他の会社と比べてあまり感じられなかった。勘違いかもしれないが、自分が働くならホンダの工場がいいかも、とちょっと思った。えんじ色の腕章をつけた、明るい髪の色の女性が白い歯を見せながら作業していたのが印象に残った。

 車体組立工程の最後にあるコラムは、「真っ白な作業着は誇りの現れ」と題されている。「よい製品はきれいな職場から生まれる」とのホンダの哲学に基づき、あえて汚れの目立つ白い作業着を着て意識を高めていることが記されている。

 「汚れないようにするには、作業場を整理整とんしたり、使う工具のお手入れをしなくてはいけません。でもふだんからそれを意識することで、(略)結果として高品質なクルマを作ることができることにつながっているのです」。

 子供の教育には最高の言葉ではないだろうか。

 最後が検査・出荷工程になるが、日本梱包のカーキャリアが、工場の狭い出口の前でトラクターヘッドを曲がるのと反対方向に1回大きく振ってから90度旋回するシーンは大迫力でいい。見ていて萌えますね、これ。


おススメ度 ★★★★★
臨場感   ★★★★★
情報量   ★★★★★

■三菱自動車「なぜ?なぜ?クルマづくり調査団」

「三菱自動車とは?」「クルマはこうやってつくられます」「人と環境にやさしいクルマ」「クルマの自由研究」「みんな知ってる? 交通安全クイズ」「質問コーナーQ&A」の6コンテンツあり、非常に充実した内容(出典:三菱自動車)

三菱自動車「なぜ? なぜ? クルマづくり探偵団」

 こちらは小学生向けに作られているサイト。「クルマはこうやってつくられます」のページから「バーチャル工場見学(生産)」に行くと、トラックから積み下ろされた鉄の塊からエクリプスクロスが完成するまでの生産工程の8分2秒の動画が見られる。

 この動画はなんといっても音が生々しい。ナレーション・BGM一切なし。工場内で実際に出ているパネルが切断される音、金属同士の擦れ合うキーキーという音、歯医者で歯を削られる音を100倍ぐらい増幅させたようなスポット溶接の高周波の音。ライン作業の時に鳴り響く電子音。とにかく臨場感がある。実際に自分が工場で働いたらこんな感じなんだろうな、というのが想像できる。

塗装工程は下塗り、中塗り、上塗りなどを子供でもわかるようにわかりやすく説明している(出典:三菱自動車)

 塗装も普通では見学できないところにカメラを設置して撮影しているカットもあるように見受けられ、できるだけいい映像を見てほしい、という気合いも感じられる

 電池パックの組み付け作業(4分6秒あたり)の動画では、けたたましく鳴るアラーム音やメロディ音のなかで緊張感の高い作業が行われているのが見られる。

純エンジン車には燃料タンク、電気自動車には電池パック、プラグインハイブリッド車には両方をクルマの下から組み付ける様子が映っている(出典:三菱自動車)

 カメラワークも編集も非常に丁寧で、生産過程で出るプレスの音、ネジの締め付けの音、機械的なオルゴール音、警告音、一つ一つの作業の音が本当によく聞こえるので実際の工場見学よりも臨場感が高いかもしれない。

「工夫 作業者から一言」というコーナーの、実際にプレスや溶接、塗装の現場で働いている人が、自分の仕事のどんな点が難しいのか、自分の仕事にはどんな意味があるのかを語りかける動画もすごくよかった。

 組立てライン担当で働く女性が登場して、バンパー作りの難しさをチームワークで乗り越える話を語るが、ダイバーシティの面でもとてもいい。検査の係の方も、一生懸命いいクルマを届けようという気持ちをカメラに向かって不器用だが真剣に伝えようとしていて、胸が熱くなる。

 塗装ラインではほぼ全てをロボットが作業しているが、あえて人の手で作業するところを残し、技術・技能を確実に身につけ、海外や次世代に伝えていき、より良いクルマを作り続ける努力をしているという動画も説得力が強かった。

 また、「もっとくわしく!」というコーナーがあり、「取り付ける部品を間違えることはありませんか?」「作業者が急にトイレに行きたくなったらラインを止めますか?」という囲みがあり、その答えを聞いて、なるほど! と思ってしまった。

 小学生向けと対象年齢は低いものの、全体的にかなり力を入れて作っていることが伝わってきて、大人が見ても十分楽しめるものだった。


おススメ度 ★★★★★
臨場感   ★★★★★
情報量   ★★★★★

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