運転しても気付かないほどの小さなほころびが、徐々に異音や振動、臭いなどでトラブルの前兆を伝えてくるようになる。「そのうち修理に出さないとダメだな」とか、「そろそろ、修理に入れるかなぁ」なんて、運転する度に思うものの、ついつい後回しにしてしまうものだ。
しかし放っておくと、後で驚くほどの出費を強いられたり、クルマの寿命を左右してしまうことになる。
街で信号待ちをしている時などに、エンジンやブレーキから異音を放ちながら通過するクルマを見たことがないだろうか。
明らかにエンジンが終わっているような異音を放っているクルマ(軽自動車や商用車が多い)は、放ったらかし、乗りっ放しの仕打ちを受けていることを伝えてくるが、それらはもう手遅れの断末魔が放つ悲鳴だ。
けれども警戒すべきはそれではない。今修理すれば、軽傷で済むような状態なのに、そのまま走らせていることだ。それが原因で出費が嵩んだり、他の部分にまでダメージがおよぶことになるのだ。
こうした症状をそのままにしておいて、あとあと「しまった! やっておけばよかった」と後悔しないように、早め早めのうちにやっておきたいメンテナンスを紹介していきたい。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(トビラ用:WavebreakmediaMicro@Adobe Stock)
■ブレーキ回りが最も重要なメンテナンス箇所
エンジンよりもメンテナンスで大事なのは、安全に直結するブレーキの能力だ。キーキーと足回りから音が出ているにも関わらず、「普通に走れているから」という感覚だけで、乗り回されているクルマを見かけるのは今や珍しくない。
自分でメンテナンスする筆者のようなオーナーやメカニックからすれば、クルマが悲鳴を上げているのに鞭打って働かせるような印象を受けて、いたたまれない気持ちになるものだ。
高い音を発しているのは薄い鉄板で作られたセンサーで、ディスクローターと接触することによりパッドの摩耗限界を知らせているのだ。
国産車の場合、ローターが極端に摩耗することは少ないが、パッドの摩耗限界を超えてもそのまま使い続けると最悪のケースでは、ブレーキパッドの摩材が完全に消失し、摩材が貼られていたバックプレートがディスクローターと接触して制動する(フルメタルパッドと冗談で言われる)状態になってしまう。
これでもゆっくり走っていれば止まれる状態なのかもしれないが、とっくに整備する限界を超えている。
こうなるとブレーキパッドを交換するだけでは、元の性能を取り戻すことはできない。偏摩耗したローターも交換、もしくは研磨して、キャリパーも点検してオーバーホールする必要がある可能性が出てくる。
こうした症状のクルマに乗っているのは、クルマ好きではなく、飛ばすようなドライバーでもない、普通のドライバーが多い。
「クルマにお金をかけたくない」という感覚が強いのかもしれないが、乗りっ放しでお金をかけないことで、かえって出費が増えたり、交通事故の原因となって後悔することになりかねないことを知っておくべきだ。
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