セドリック/グロリアの系譜を継ぐドライバーズカーとして、2004年に華々しく登場した、日産「フーガ」。しかし現在のフーガは、デビュー当時の華々しさから一転、12年もフルモデルチェンジをされずに放置されており、販売台数も細々、と無残な状況。
もちろん、12年間、何もやってこなかったわけではなく、今日に至るまで、フェイスリフトや先進安全装備のアップデートなどの小改良は行われてきた。しかし、インテリアデザインなどの基本設計の古さは否めず、定期的にフルモデルチェンジを行っているライバルメーカーとの戦闘力の差は広がるばかりだ。
名門出身でありながら、無様な状況のまま放置されてしまっているフーガ。フーガがこれまで辿ってきた道を振り返りつつ、フーガの今後について考えていく。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
まずまずの成功を収めた初代、「世界最速の市販ハイブリッド」の名誉を得た2代目
まずは、これまでの「フーガ」がどんなクルマであったのか、振り返ってみよう。
1980年代に華々しく活躍した、高級ミドルクラスセダン兄弟「セドリック」と「グロリア」のポジションを継ぎ、2004年10月に発売された、初代「フーガ(Y50型)」。2001年に登場したV35型スカイラインと同じく、フロントミッドシップにエンジンを縦置き配置する「フロントミッドシップパッケージ」(FMパッケージ)を採用したFR-Lプラットフォームと、緻密に計算された重量配分をもつ、ドライバーズセダンとして登場した。
BMWの5シリーズをターゲットにして開発された初代フーガは、抜群の走行性能をもち、快適性も上々、インテリアも質感が高く、新世代の高級スポーティセダンとして、まずまずの成功を収める
エンジンは、4.5L V型8気筒 のVK45DE(333ps)と、3.5L V型6気筒のVQ35DE(280ps)、2.5L V6のVQ25DE(210ps)の3種類、マニュアルモード付5速ATとの組み合わせであった。よりスポーティな路線の「450GT」「350GT」「250GT」と、よりラグジュアリーを狙った「350XV」と「250XV」のグレード構成を持ち、GTには、19インチのタイヤ&ホイールも設定された。
2004年当時は、高級セダンに19インチのタイヤホイールを装着した事例は珍しく、この初代フーガを皮切りとして、他の高級車メーカーも追従していったという記憶がある。また、それまでのセドグロ路線とは異なる、若々しいデザインもよく似合っていた。
この初代フーガは、北米インフィニティのラージFRセダン「M(2014年にQ70と名称変更)」とモデル共用。「M」が北米の若くして成功した顧客に向けのモデルであるため、若々しいデザインが採用されていたのだ。
現行である2代目フーガ(Y51型)は、2009年11月に登場。初代同様に、BMW5シリーズを開発目標に掲げ、Lクラス級の巨大なボディを持ちながらも、徹底的にハンドリングにこだわり、日産お得意の後輪操舵システムと、フロントアクティブステアを組み合わせた「4WAS(4輪アクティブステア)」も継承する、生粋のハイパフォーマンス・スポーツセダンとして登場した。
当初、国内仕様には2.5LのV6と、排気量を200ccアップした3.7LのV6、という2基を設定していたが、その1年後の2010年11月、3.5Lエンジン+1モーター2クラッチ方式のハイブリッドシステムを搭載した「フーガHYBRID」を追加。
このハイブリッド仕様のパフォーマンスは、2012年当時、0-400m加速で、ポルシェパナメーラのタイムに勝利し、「世界最速の市販ハイブリッド」という名誉を獲得している(タイム13秒9031は当時のギネス世界記録に認定)。ちなみに北米インフィニティには、5.6L V8エンジンを搭載した「M56」という、胸アツなモデルもあった。
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