すっかり姿を見なくなったクルマの装備といえば、リアウイングが挙げられる。「暴走族っぽい」とか「オタクっぽい」と、クルマに興味のない層からは嫌われていたリアウイングだったが、はたして本当に今も嫌われているのだろうか。
最近は風向きが変わり、もしかしたら老若男女にウケているのではないかと、微かな希望を抱いた自動車評論家の清水草一が、現代におけるリアウイングの捉われ方を調査。つい最近、リアウイング付きのBRZを購入した自動車ライター・マリオ高野の証言を交えて、その実情をレポートする。
文/清水草一 写真/清水草一、フォッケウルフ
【画像ギャラリー】絶滅危惧種? 大型リアウイング搭載モデルを一気に見る!(8枚)画像ギャラリー■現在吊り下げ式リアウイングを装着する国産車は?
近年、「リアウイング」を装着したクルマを見かける機会が、めっきり減っている。トランクリッドにボディ一体型のフィンを付けた「リアスポイラー」ならそれほど珍しくないが、ボディから浮き上がった形状の「リアウイング」は、かなりレアな存在だ。
1990年代の国産スポーツ全盛時代には、スカイラインGT-R、スープラ、GTO、ランエボ、インプレッサWRX、シルビア、インテグラタイプR、シビックタイプRなどなど、ド派手なリアウイングを装着したモデルが豊富だったし、販売台数も今よりはるかに多かった。
ただ、初日の出暴走的な違法改造の巨大なリアウイングも目立ち、それによってリアウイングに対する世間一般のイメージは悪化。90年代も後半になると、リアウイングに対する世の中のイメージは、「暴走族っぽい」「オタクっぽい」など、はっきりネガティブなものになった。スポーツカーそのものが、「室内が狭くて不便なクルマ」という評価になってしまったのだ。
スポーツカーがモテない乗り物になった影響もあり、スポーツモデルの数は徐々に減少。また、ボディ(特に下面)の空力形状の進化によって、スポーツカーにも巨大なリアウイングを装着する必要性が減少。結果的に、リアウイングは激減してしまっている。現在でも生き残っているリアウイング付きの国産車は、以下の通りだ。
■日産 GT-R
GT-Rはリアウイングの牙城。国産スポーツにおけるリアウイングの象徴的存在と言ってもいい。ただ、現行GT-Rは、R34スカイラインGT-Rのソレに比べると、形状は控え目。洗練されていて、威圧感はほどほどだ。GT-R NISMOは、翼端板を持つレーシィなリアウイングになるが、予約販売台数に達したため、現在はオーダーできない。
■レクサス RC F
自動格納式の「アクティブリアウイング」が標準装備される。せり出した状態でもボディとの隙間は小さく、リアウング感はいまひとつだが、「格納式」そのものに萌えるカーマニアも多いので、充分価値はある。
また、「カーボンエクステリアパッケージ」を選択すると、格納式リアウイングがカーボン製になり、さらに「パフォーマンスパッケージ」を選ぶと、いかにも羽根らしく、トランクから支柱で支えられた形の、固定式カーボン製リアウイング(翼端板付き)になる。
■レクサス LC
「Sパッケージ」を選ぶと、RC F同様、トランクの一部がせりあがってウイングになる「アクティブリアウイング」が装備される。
■スバル BRZ
メーカーオプションにリアウイングはないが、STIパーツには、スワンネック型のドライカーボン製リアスポイラーが用意されている。姉妹車のGR86は「GRトランクスポイラー」までで、リアウイングはナシ。
なんと、たったのこれだけ! わずか4モデルとは! しかもGT-Rは、来年中の生産終了が噂されている。そうなると3モデルになってしまうし、レクサスの2台は非常にレアで、街で見る機会はほとんどない。
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