TNGAプラットフォームの採用で9年ぶりに今年7月にフルモデルチェンジを受けた新型アクア。そのキープコンセプトな外観デザインが災いしてなのか、今いち新車としての立ち位置がビミョーで目立たない部分も。
しかし、デビュー初月の今年8月は1位のN-BOX1万347台、2位のヤリスクロス1万310台に次ぐ3位となる9442台を販売していて実力どおりの販売状況を示している。
そんなアクアに秘められた魅力はどのあたりになるのか、この新型アクアをご身内が実際に購入した際に自身も担当ディーラーとの折衝で奔走した渡辺敏史氏が分析する。
文/渡辺敏史
写真/トヨタ、ベストカー編集部
■トヨタではヤリス軍団に次ぐ2位の位置付け!
アクアがフルモデルチェンジを受けたのは今年7月19日のこと。以降の販売状況を振り返ってみると、7月は7902台で5位、8月は9442台で3位、9月が1万1137台で2位となっています(登録車でのデータ)。
順位ベースではヤリス軍団に次ぐ2位ですから、言ってみれば定位置に落ち着いたようにみえます。が、台数ベースでみるとちょっと寂しい。発表されている月販目標は9800台ですから、半期決算的な位置づけの9月は、2万台オーバーくらいの勢いがあっても不思議ではありません。
数的低迷の理由はお察しのとおり、部品供給の滞りです。昨年から問題化している半導体不足は来年いっぱい続くのではないかという見通しも自動車業界から出始めている次第。加えて先頃まではコロナ起因のロックダウンによるアジア圏の部品生産の停止が深刻な問題と化していました。
ハーネスひと束、カプラーひとつ欠けてもクルマは作れない、それを思い知るところです。これらの原因で国内総販売台数は8月、9月と約3割減になっています。それは他国の市場でも概ね同じ状況でして、ああ世界は繋がってるんだなぁと、それも思い知るところです。
■コロナ影響で遅れるアクアの納期
実は拙の実家が、新しいアクアを買いました。それまで乗っていたプレミオが登録から13年を超えて理不尽な増税ゾーンに入ったうえ、荒い扱いもあってクタクタになっていたところで、親父がいなくなり、クルマもダウンサイズできる環境になったこともあって、僕に相談もなく買い替えを目論んだようです。
「これでいいか」と見積書が写メで突然送られてきたのは今年7月末。支払額がほぼ300万円に達するほど言いなり、てんこ盛りのオプション関係を呆れながら添削しつつ、それでもナビは親しんだ操作ロジックのやつがいいとか、バックモニターが大きく見えるから画面は大きいやつがいいとか、高齢者なりの事情を鑑みてコミコミ280万円で妥結。押印させたのが8月1日でした。
そして納車は11月3日。クルマのことばかり考えているオッさん的には供給事情も察していたので待ってあげなさいと諭すものの、「大衆車の納期がなんでそんなにかかるのよ」、「入金抱き込んで潰れるんじゃないの」とか言い出す始末で、まぁ普通の人はそういう感覚だろうなぁとしみじみした次第です。しかし、疫病がもたらす損害の余波がこういう至り方をするとは、ゆめゆめ考えてもみませんでした。
■ここで感じるトヨタの販売力
……と、ここで白状すると、押印させた時点で僕はアクアに触れてもいなかったんです。まぁなんと無責任なことでしょう。まぁ、正直な話をすると、最初は個人的嗜好から、「フィットにしときなさい」と言いました。
が、半世紀に及ぶ自動車生活のほぼすべてをトヨタに捧げてきた田舎の普通の人にとって、意趣替えのハードルは非常に高い。そしてやっぱりトヨタは手厚い。今回の納車待ちの間にもセールスマンは納車進捗を逐一報告してくれたそうですし、販社からは納車遅れのお詫びですと生パスタセットを送ってきたそうです。
スレきった僕などは、そりゃあディーラーオプションで5万円のドラレコ装着してりゃあパスタくらい送ってくるわ……と醒めたものでしたが、母と姉は小躍りして喜んでいました。ベタとわかっていてもこういう絡め取りが平然とできて、それが隅々にまで行き渡っている。そんなトヨタの販社力が、似たような車格のヤリス軍団の背後にピタリとアクアを押し込む理由でもあります。
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