スーパーSUVは日本車の専売特許だった!! 超速SUV今昔物語

スーパーSUVは日本車の専売特許だった!! 超速SUV今昔物語

 日本も含め、世界中どこもかしこもSUV。とにかくSUV人気はエスカレートするばかりだ。ついにSUVブームは桃源郷、禁断の領域ともいえるバカっ速な「スーパーSUV」の時代に突入している。

 かつてスポーツカーよりも速いハイパワーSUVといえば、日本車の専売特許だった。残念ながら、そうした国産車の「スーパーSUV」は今ではほとんど新車市場から姿を消してしまい、輸入車が幅を利かせている。無念。

 本企画ではそんな、かつて世界を席巻していた日本のハイパワーSUVを紹介するとともに、輸入車を中心に「スポーツカーよりスポーツできるSUV」を紹介したい。

文/松田秀士

写真/ベストカー編集部


■日本車のスーパーSUVは?

 このスーパーSUV、実は1990年代には日本車に存在していたのだ!

■パジェロ エボリューション(1997年9月)

3.5L、V6:280ps/35.4kgm

1997年9月に販売されたパジェロエボリューション。1997年のパリ・ダカールラリーのホモローゲーション取得用モデルで、280ps/35.4kgmの6G74型3.5L、V6エンジンを搭載。5速MTが374万円と、かなりお買い得なモデルだった。エクステリアには冷却効率のため開口部面積を増やし、フォグランプをビルトインした専用大型フロント&リアバンパー、大型のアウトレットを備えた専用オーバーフェンダー、大型インテークを備えた専用アルミボンネットフード、従来オプションのアルミスキッドプレート、専用ホイールやヘッドランプを装備。インテリアにはカーボン調パネル、本革巻ステアリング(ブラック)、シートにも専用レカロを採用した

 先見の明があったかどうかはわからないが、一番最初に挙げたいのがパジェロエボリューションだ。1997年に行われたパリ・ダカールラリーのレギュレーション変更に伴い、そのホモロゲーション取得のために製作されたモデル(限定2500台)。

 ラダーフレームを備えた2代目パジェロのショートボディ、メタルトップZR-Sをベースに開発され、大型インテーク付きのアルミエンジンフード、専用アウトレットを備えた大型ブリスターフェンダーを身にまとっていた。

 ストロークが約35%長大化した専用の4輪独立懸架サスペンションに加え、世界初のフルタイム・パートタイム複合の4WDシステムであるスーパーセレクト4WD、ヘリカルLSDとビスカスを装着したハイブリッドLSDなど、メカを見てもスーパーSUVと呼べる内容だ。

 エンジンは6G74型3.5L、V6DOHCに可変バルブタイミング機構のMIVECを組み合わせ、ベースモデルの245ps/35.0kgmから280ps/35.5kgmまで向上している。

 パワー的には280psの自主規制に飛び抜けて目を見張るものはないが、サスペンションを見直し、ストロークを増やしたため、ハンドリングと乗り心地が素晴らしかった。

■RVRハイパースポーツギアR(1997年1月〜1997年10月)

2L直4ターボ:250ps/31.5kgm

  次にパジェロエボリューションとほぼ同じ時期、1997年1月、わずか700台あまりしか販売されなかった三菱RVRハイパースポーツギアR。SUVというよりRVだが、紹介させてほしい。

ランエボと同じ4G63型2Lターボを搭載する初代RVRハイパースポーツギアR

 見た目こそ、SUVテイストのトールワゴンだが(2列シート5人乗り)、その中身が凄かった。なんとランエボと同じ4G63の2Lターボ搭載されており、そのスペックは250ps/31.5kgm。さすがにボディ剛性不足を感じたが、ひとたびアクセルを踏んだ時の加速フィールは豪快で、見かけと速さのギャップは凄まじかった。

 ここで、普通のSUVにも隠れたスーパーSUVがあったのを忘れちゃいけない。初代エクストレイルGTと先代フォレスターXTだ。

■初代エクストレイルGT(2001年2月〜2007年7月)

2L直4ターボ:280ps/31.5kgm

VVL(可変バルブリフトタイミング)機構を組み込んだSR20VETエンジンは2Lターボで280ps/31.5kgm!

 初代エクストレイルGTは吸気側のバルブタイミングとリフト量を変えられるVVL付きのSR20VETユニットを搭載。2001年6月の発売当時は自動車雑誌が、こぞって国内初の280psを発生する2L+AT車と上げ潮モードで取りあげたものだ。アクセルを踏み込むといかにもターボ車らしいフィールで、高速用カムに切り替わる5000rpmを超えてからはやはり速い。それでいて乗り心地はフラットでガチガチというわけではない。

■フォレスター2.0XT(2012年11月〜2018年5月)

2L水平対向4気筒ターボ:280ps/35.7kgm

先代フォレスター2.0XTは280ps/35.7kgmを発生する2L水平対向4気筒ターボを搭載。現段階では、現行フォレスターにはターボが積まれる可能性は低い

 そして、新型フォレスター登場でスバリストの間で惜しむ声も聞かれたターボ車の廃止。そのターボ車が先代フォレスターの2.0XTだ。FA20型直噴DIT2Lターボは280ps/35.7kgmを誇る。

 スポーツモード、スポーツ♯モードにするとアクセルを踏んだ瞬間から立ち上がるレスポンスのいい280psのDITエンジンを搭載した2.0XTは、貴重なSUVのターボ車として名残惜しい。

■ジュークニスモRS(2014年11月〜)

1.6L直4ターボ:214ps/25.5kgm

2014年11月に販売されたジュークニスモRS。ジュークニスモをベースに24ps、1.1kgm向上した1.6L直4ターボ(214ps/25.5kgm)を搭載。価格はジュークニスモが297万1080円。ジュークニスモRSが346万8960円

 お次はメーカー直系のワークスチューン、ジュークニスモRS。2014年11月に発売されたこのジュークRSは、ジュークニスモの最高出力が200psから214psに、最大トルクが1.1kgmアップされ、8速CVTが組み合わされている。

 フロアのクロスメンバーやCピラー内側をはじめとする車体各部の補強は、日産追浜工場で車体組み立て段階で行われ、車体のねじり剛性を向上させることで、精緻でクイックなステアリングレスポンスと、しっかりとした乗り心地を両立させている。

■ジュークR(2012年)、ジュークR2.0(2015年)

3.8L、V6ツインターボ:545ps(ジュークR2.0は600ps)

GT-RのVR38DETTエンジンをジュークに移植した、まさにスーパーSUVのジュークR。約5000万円という価格にもビックリ

 ジュークRSよりもさらに凄いモンスターSUVがジュークRだ。VR38DETT、GT-Rのエンジンを積んで、2012年に世界で4台、約5000万円で販売された。気になるスペックは量産型で545ps、最高速度は257km/h、0〜100km/hは3.7秒!

  制作したのはBTCCやル・マンをはじめ、世界トップレベルのレースシーンで豊富な経験と確かな技術を持つRMLことレイ・マロック社。NTCE(日産ヨーロッパ・テクニカルセンター)とNDE(英国日産デザインセンター)のサポートを得て,製作された。

 米国での試乗会の特設コースで試乗したが、もちろんパワーは言うまでもなく素晴らしく、なによりもアクセルを踏み込むと簡単にテールスライドを起こし、意のままに操れることに感動した。

 もちろん4WDでパワースライドだから安心感が高いのだが、ジュークRの心臓部は明らかにオーバースペック。だからこそ楽しいのだ。約5000万円という価格にはタマゲたが、久しぶりに夢を見させてもらった。

 その後、ジュークRは2015年にGT-Rニスモのエンジンを積んでジュークR2.0に進化し、600ps/66.5kgmにアップし、最高速度は266km/h、0〜100km/hは3.0秒を誇る。

 これにはトヨタも黙っちゃいなかった。2017年11月SEMAショーで北米トヨタが600psにチューンしたC-HR R-TUNEDを発表。でも結局、発売には至らなかった。

■フォレスターSTI ⅡタイプM(2001年10月)

2L水平対向4気筒ターボ:250ps/31.5kgm

STIが手掛けたフォレスターのコンプリートカーは、2代目フォレスターSTIバージョン(265ps/38.5kgmの2.5Lターボ+6MT)やtSなどのコンプリートカーがあるが、このSTI ⅡタイプMがスーパーSUVといえるのではないだろうか

 日本車のスーパーSUVの最後はこれぞ、SUVのホットバージョンとして挙げておきたいのがSTIが手がけたフォレスターだ。tSなど数あるSTIコンプリートカーのなかでも、スーパーSUVといえるのは、初代フォレスター(SF5型)をベースにしたSTI ⅡタイプMではないだろうか。

 当時、スポーツ走行をできるSUVがなかった時代にSTIが本格的なスポーツ走行が楽しめるフォレスターベースのコンプリートカーがあった。

 まず2000年5月にS/tb-STiが500台発売されたが、すぐに完売。半年後には4WDシステムがフロント寄りからリア寄りに変更されたⅡ型が発売され、2001年10月、今度は10psアップの250ps/31.5kgmのEJ20型2L直4ターボを搭載した、5速MTのSTI ⅡタイプMが限定800台でリリースされた。MTながら、あっという間に完売してしまった。

 このSTI ⅡタイプMが素晴らしかった。ドロドロドロというボクサーサウンド、3000rpmからトルクが増大し、アクセルペダルをひと踏みすれば思わず速いと唸ってしまうほどのピックアップのいいEJ20エンジンだった。全高が45mmダウンされ、シャープさとしなやかさを両立させたSTIによる絶妙なサスペンションチューニングなど、まさに元祖スーパーSUVと呼んでも差し支えないクルマだった。

次ページは : ■ここでSUVをいま一度おさらいしよう!

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