レクサスは新型EV「RZ」で、スピンドルグリルをさらに進化させたスピンドルボディを採用した。
2012年、初めてスピンドルグリルをレクサスGSに採用してから10年。改良ごとにデザインが煮詰められ、当初は取ってつけた感が……という声のあったスピンドルグリルも、かなり消費者に浸透したと言えるだろう。
近年販売も好調のレクサスだが、スピンドルグリルを選択したことは、現在の実績から見て正解だったのか? 考察していきたい。
文/清水草一
写真/LEXUS
■当初不評だったスピンドルグリルを大切に育てたレクサスの覚悟
トヨタ初の量産EVである「bZ4X」に続き、そのレクサス版の「RZ」が公開された。
RZは、レクサス販売の中心を担うSUV、RXクラスのEV。デザインもRXの相似形だが、レクサスの象徴であるスピンドルグリルがグリルレス化され、グリルだった部分は、ボディのようにのっぺりしている。
ただし、スピンドル形状の周囲にフィンを付けたり、周囲のボディカラーを変えたりすることで、スピンドルの輪郭は明確に残され、誰でも一目でレクサスであることがわかるようになっている。
レクサスはこれを「スピンドルボディ」と呼んでいるが、これまでのスピンドルグリルに比べて斬新だしカッコいい! のではないだろうか。
従来のスピンドルグリルは、巨大な面積のすべてが空気取り入れ口ではなく、デザインアイデンティティのための装飾的意味合いが大きかった。
一方RZのグリルレスは、空気を吸い込まないEVのあるべき姿。つまりスピンドルボディは、スピンドルグリルよりも、機能とイメージ作りを両立させている。
そもそもスピンドルとは「糸車」のこと。糸車を横から見た形をイメージしたのがスピンドルグリルだ。
スピンドルグリル採用以前のレクサスは、「L-FINESSE」をデザイン哲学として掲げていた。それは、奇を衒った造形ではなく、シンプルでありながら先進的かつ深みのあるデザインを目指すというコンセプトだった。
L-FINESSE当時のレクサス車は、パネル面の微妙なうねりや、質の高い繊細な造形を目指していたが、繊細すぎて強さがなかった。走りも、ドイツ御三家に比べると全体に穏やかだったから、「レクサス=自己主張の弱い曖昧な高級車」という、漠然としたイメージができあがってしまった。
「このままでは、レクサスは真の高級車ブランドになれない」と危機感を抱いたトヨタは、アウディのシングルフレームグリルの成功に倣い、それまでの控え目路線を捨て、スピンドグリルを導入。最初の採用は2012年登場のレクサスGSだった。
当初は「エグイ」とか「浮いてる」と、どちらかと言えば不評だったが、アウディのシングルフレームグリルも、最初から好評だったわけではない。こういった統一デザインは、こうと決めたら継続しないと意味がなく、コロコロ変えるようでは逆にマイナスになる。
トヨタの覚悟は本物だった。当初の不評をものともせず、スピンドルグリルを大切に育て、徐々に巨大化させつつ、フォムル全体になじませて行った。
コメント
コメントの使い方