ついに16代目となる新型クラウンが発表され、多くのファンの注目を集めている。しかも4つのボディタイプへと進化して、初めて全世界販売になるなど、新しい価値観を生み出すことに成功している。
そんなクラウンは、これまでのモデルでも様々な革新的な試みをしてきた。かなり早い段階でマイルドハイブリッドをラインナップに取り入れ、市販車として実用性の高いスーパーチャージャーも早期に採用している。
そんなクラウンの先進性を振り返ろう!
文/斎藤 聡、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■とうとう始まった16代目の「クラウン維新」
昭和世代のオジサンにとってクラウンは保守本流の高級車です。と同時に先進技術を積極的に取り入れた時代の先端にある高級車でもありました。
けれども、クラウンの歴史を改めて紐解いてみると国産車開発の黎明期を担い、日本のモーターリゼ―ションのけん引役を務めてきた重要な1台でもあるのです。そして、けん引役であり続けるために、新技術を取り入れ、道を切り開いていくための試行錯誤の歴史も同時に持っていることが分かります。
終戦後GHQの命令で乗用車の生産は禁止されており、解除されたのが1949年です。ここから各自動車メーカーは自動車の生産を始めるわけですが、欧米レベルの新型車を作るには埋められないほど大きな技術的ギャップがありました。
それを埋めるため海外メーカーのノックダウン生産という形で戦後の日本の自動車生産は始まります。
そんな中トヨタだけが独自路線を選び、純国産乗用車の開発に取り組んだのです。そして生まれたのが1955年登場のトヨペット・クラウン(初代クラウン)です。
■初の純国産車は最新技術のカタマリ
さて、クラウンの先進技術についての話ですが、そもそもクルマ自体が初の純国産車ですから最新の技術の塊と言っても過言ではありません。
初代クラウンに搭載されていた注目の技術としては前輪ダブルウイッシュボーン式の独立懸架(日本初)、トヨグライドと呼ばれる2速半自動A/T(日本発)の採用が挙げられます。ちなみにトヨグライドは、1962年に登場の2代目で完全自動化したAT(トヨグライド)へと進化しています。
クルマの骨格であるフレームも、初代はラダーフレーム、2代目がX型フレームと進化し、3代目ではペリメーターフレームが採用になっています。これもラダーフレームの一種で、フロアの外縁部にフレームを通す形状です。
フレームにブッシュを介してボディを載せるので、サスペンションからのショックをボディで直接受け止めるモノコックフレームよりもノイズ、振動面での静粛性の面で有利で、またフロア部に補強部材が通らないためシート位置を低くできるなどのメリットがあります。
このフレームタイプは10代目クラウン(1995年~)まで(マジェスタは9代目にモノコックフレームを採用)使われることになります。ある意味クラウンの全盛期をになったクラウンのコア技術と言ってもいいかもしれません。
このほか3代目クラウンでは、日本初採用ではありませんがパワーウインドーやフロントディスクブレーキも採用されています。
4代目は別名クジラクラウンと呼ばれる丸みを帯びた特徴的なエクステリアデザインです。4代目の搭載技術で興味深いのは後輪ESCと呼ばれる横滑り防止技術です。これは後輪ブレーキのみを電動で制御するもので、現在のESCの原型と呼べるものです。
5代目クラウン(1974年~)ではオーバードライブ付4速ATが世界初搭載されました。また車速感応型パワーステアリングが日本初搭載になっています。
このOD付4速ATは6代目(1979年~)でETCと呼ばれるマイコン制御自動変速装置に進化します。また燃料消費量や平均車速などを表示できるクルーズコンピュータも搭載され、電子制御化をいち早く取り入れているのがうかがえます。
7代目クラウン(1983年~)は「いつかはクラウン」のキャッチフレーズで売り出されたモデルです。これはトヨタの手前味噌なキャッチコピーではなく、この頃日本で一番いいクルマ=ラウンという空気が巷に広くありました。
3L直6DOHCエンジンとともに2L直6DOHC+スーパーチャージャーが搭載されたのもこのモデルです。このほか4輪独立懸架サスペンション(日本初)、4輪ESC(ABSの前身)なども採用されています。
1987年クラウンは8代目に。3ナンバー専用ボディ、4L・V8DOHCエンジン、電子制御エアサスペンショントラクションコントロール(日本初)、NAVIの前身にあたるCDロム式カーNAVI(世界初)など、さらに高級化と先進技術を加速させいよいよクラウンは我が世の春を謳歌しているように見えます。
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