今も変わらない独特の輝きを放ち続ける平成のレトロカーたち。その魅力に目を奪われるたびに我々は考える。彼らが正統進化した姿を。出会うことは叶わなかった「次期型」のシルビアやRX-7……。
それらの出現を阻んだのは「平成12年排出ガス規制」。平成レトロカーの分水嶺となったあの排ガス規制を通して、魅力あるレトロカーたちの命運を振り返る。
※本稿は2022年9月のものです。
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年10月10日号
■規制対応を見送り姿を消したクルマたち
平成レトロカーといってもその範囲は幅広い。いま改めて手に入れて乗るというのであれば、現実的なのは2000年前後以降のモデルということになろう。
平成レトロカーを語るうえで、絶対に忘れてならない出来事がちょうど20年前の2002年8月末にあった。
そう、強化された排ガス規制への対応を見送ったクルマたちが、同年8月31日をもって生産を終了したのであった。
この時生産、販売を終了したのがR34型スカイラインGT-R、A80型スープラ、FD3S型RX-7、S15型シルビアなどであった。
この要因となった『平成12年排出ガス規制』が施行されたのが2000年10月1日のことであった。
それまで適用されていた『昭和53年排出ガス規制』から約70%も排ガスを低減する、低公害に則した厳しい規制。
具体的にはNOx(窒素酸化物)が0.48g/km→0.08g/km、CO(一酸化炭素)が2.70g/km→0.67g/km、HC(炭化水素)が0.39g/km→0.08g/kmというもの。
施行日よりも前に認可を受けていたクルマの生産猶予期間とされたのが2002年8月31日だったのだ。
もちろん、各メーカーの技術力をもってすればこれら各車もパフォーマンスを落とすことなく排ガス規制をクリアすることはできた。
だが、いずれもエンジン本体の基本設計が古く、また、時代的にスポーツモデルの販売が低調化していた。
そのため、多額なコストをかけて排ガス対応をするよりも、その開発資源を人気の高まっていたミニバンや、今後の投入が必須とみられたハイブリッドパワーユニットなどの開発に充てたほうが有益と判断され、生産を終了していったのであった。
トヨタはスープラの販売を終了したことで、このあとしばらく2ドアスポーツモデルがラインナップされない期間が続くこととなった。
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