トヨタは2023年9月19日、このほどメディアに披露した「モノづくりワークショップ」について発表した。これは2023年6月に実施した「トヨタ テクニカルワークショップ」で公開した技術についての実践編だったが、詳細についてレポートしよう。
文/国沢光宏、写真/トヨタ、ベストカーWeb編集部
■若者たちが未来を託せる自動車産業に!
日本の自動車産業は中国に押され気味。テスラのような電気自動車も作れていない。このままだと若い人たちにとって自動車産業は未来を託せるような就職先じゃなくなりそうである。
という世の中の空気を察したトヨタは『モノづくりのワークショップ2023』という最新生産技術の勉強会を行った。内容と言えば「こんな技術を公開してもいいのか?」と思えるほど濃かった。
電気自動車に詳しいと思っている私からすると、「実現できたら電気自動車用電池の最先端に出られますね!」とウナるバイポーラ型リン酸鉄リチウム電池や、テスラが採用し、トヨタが2026年に発表する次世代電気自動車で採用するギガキャストのプロトタイプなど、9時間(1日半のスケジュール)にも渡るプレゼンの内容は圧巻でした。以下、大物に絞って紹介したい。
■2026年に出したら電池で世界トップに立てるバイポーラ型リン酸鉄リチウム
まず、「革新的な技術になる」と感じたのがバイポーラ型リン酸鉄リチウム電池である。リン酸鉄を正極材として使う電池は、現時点ではすべての日本製電気自動車が採用している三元系リチウム電池より安価で材料も豊富。
しかも燃えにくくて3~4倍の寿命を持つ。今後10年の主力電池になると考えていい。されど日本勢は完全に出遅れてしまった。挽回しなければならない。
メーカーによっては「全固体電池だ」と言っているけれど、そちらは技術的な課題を多く残しており、しかも高価。日本車が得意とする実用車用というより、高級車やスポーツカー用と言っていい。トヨタが開発中のバイポーラ型は、リン酸鉄リチウム唯一の弱点である「エネルギー密度の低さ」をカバーする技術。正極と負極を連続させることにより、エネルギー密度を向上させることが可能。
中国もバイポーラ型にすればいいと思うだろうけれど、高度な生産技術が必要。トヨタはすでにニッケル水素のバイポーラ型をアクアに搭載するなど、3歩進んだ技術を持っている。
今回見せてくれたのは、電気自動車用の大容量バイポーラ型リン酸鉄リチウム電池の生産技術のひとつ。正極材を薄板に塗布する行程です。2026~2027年に実用化したら電池で世界TOPに出られると思う。
コメント
コメントの使い方実はバイポーラ型バッテリーは大きな技術革新ですからね。
中国の半個体電池と同等の躍進で、安全性や量産性では上。
メディアもせめて同程度にはこの技術の高さと利点を報じてほしい。