ハスクバーナの新型車ヴィットピレン801は、先に発売されたスヴァルトピレン801とフラットフォームや多くのディテールを共有しながらも、独自のキャラクターを造り上げていた。ここではその詳細を紹介する。
高いデザイン性と安全性を追求するハスクバーナ
このヘッドライトのデザインは、一体どうなってるんだ!? ハスクバーナの新型車「ヴィットピレン801」の発表リリースをみたときに驚いた。ヘッドライトバルブとポジションランプを収めた、バイクの一般的なヘッドライトユニットとは大きく違っていたからだ。近年はLEDのデイタイムランニングライトをデザインして配置し、個性的な顔周りを造り出すモデルも増えてきた。しかし「ヴィットピレン801」が採用したヘッドライトユニットは、60個のLEDが配置されているにもかかわらず、それらがシームレスに繋がったリング状のデイタイムランニングライトと、Hi/Low切替ができるコンパクトなBi-LEDプロジェクター・ヘッドライトで構成されている。それは従来のレンズやケースでヘッドライトユニットを一体化することなく、それぞれが宙に浮いたように、単独で車体にマウントされているのに、既視感満載の単眼ヘッドライトのようにも見えるのだ。

ヴィットピレン801のスタイリングにおいて、もっとも特徴的なヘッドライト周りのデザイン。デザイン性を高めながら、高光度で広い範囲を照射できる高性能なヘッドライトにすることに注意を払ったと開発陣は語っていた。
そのデザイン効果は抜群で、実車を見た「ヴィットピレン801」は、先に発売されたスクランブラースタイルのソフトスポーツバイク「スヴァルトピレン801」と、エンジンやフレーム、サスペンションや外装のほとんどを共有しながらも、それとは異なるオーラーで佇んでいた。
また、そもそもヴィットピレンとは、ハスクバーナが誕生したスウェーデンの言葉で白い矢を意味し(対するスヴァルトピレンは黒い矢を意味する)、これまでラインナップしてきたヴィットピレン・ファミリーは白やグレーを印象的に使った、シックなボディカラーをラインナップしてきた(一部例外はあったが…)。しかし今回は、大胆なイエローのボディカラーを採用。シックなグレーのボディカラーにも、イエローの差し色が使われているチャレンジングなボディカラーを採用していた。
ユニークなことにハスクバーナの開発者たちは、ラインナップするすべてのモデルにおいて、高性能であると同時に、最先端のエレクトロニクスを用いて高いデザイン製と安全性を兼ね備えたバイクを提供することに注力している、と語ってくれた。今回、新たにラインナップに加わった「ヴィットピレン801」はまさに、それを体現するモデルだと言う。
パワフルでシルキーなパラレルツインエンジンと高性能な電子デバイス
エンジンは、LC8cと呼ばれる排気量799cc水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ。75度位相クランクという、ちょっと変わった不等間隔爆発を採用している。同じ親会社を持つ、ハスクバーナの兄弟ブランド/KTMのVツインエンジンが挟角75度であったことから、そのVツインエンジンと同じフィーリングを並列2気筒エンジンで得るために、クランクの位相を75度に設定。あわせて2つのバランサーシャフトをエンジンに内に配置したことで、エンジンはとてもスムーズ、かつ全域にわたって力強い。

位相75度クランクを持つ排気量799cc水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジン。2つのシリンダーおよび吸気系をモニタリングし、エンジンマネージメントシステムがそれぞれのシリンダーの燃焼や吸気をマネージメントしている。ラジエターカバーやエンジン底部のスキットガード、ステップ周りのヒールガードもヴィットピレン801の専用デザインだが、写真のラジエーターカバーとヒールガードはオプションパーツ。
また異なる出力特性や、それにあわせて設定されたトラクションコントロールやABSなどの電子制御デバイスを組み合わせたストリート/スポーツ/レインの走行モードにくわえ、オプションのダイナミックパックを選択すると、ダイナミックと名付けられたもっともスポーティな走行モードが追加される。
「ヴィットピレン801」は各走行モードの出力特性を「スヴァルトピレン801」と共有しつつ、スリップアジャスターやトラクションコントロールの設定を変更。ハンドルバー形状の変更によって変わったライディングポジションや、ロードスポーツタイヤ/ミシュラン・ロード6タイヤの装着にあわせ、WP製の前後サスペンションのセッティングも変更している。
そのすべての電子制御デバイスは、各走行モードの設定をベースに、ライダーが好みの反応を選ぶことができる。また前後サスペンションの減衰力調整も簡単だ。あえて設定範囲を5段階に絞り、その変化量を大きくして各ダイン会の特性を分かりやすくしているのだという。
スポーツも楽しめるオールラウンダー
75度位相クランクのLC8cは、高回転の伸びがじつに気持ちが良い。パラレルツインエンジンってこんなに伸びやかでスムーズで、速いんだっけ!? と改めて実感する。コーナーの出口でアクセルを開けると、小気味よい排気音とエンジンのビート感が、スピードが乗るにつれて連なり、ビューンッ!というレーザービームのような加速感を味わうことができる。
その加速感は、兄弟モデルの「スヴァルトピレン801」も持っているモノだが、ミシュラン製ロード6タイヤの装着や、形状の異なるバーハンドルによるより前傾したライディングポジションへの変更、さらには高さもカタチも変わらないのにシートクッションの硬さを変更したシートなど、「ヴィットピレン801」専用ディテールの採用によってその加速感はよりダイレクトでスポーティになり、「ヴィットピレン801」オリジナルの走行フィーリングを造り上げている。
でもLC8cエンジンの良いところはそれだけじゃない。開発者たちが熱っぽく語っていたのは、普段街中での走行で常用する3〜4000回転付近の、扱いやすくて、それでいて力強いトルク特性。分かりやすく言うと、交差点へのアプローチや前車の減速などで、アクセルを戻したりブレーキを掛けたりして減速してエンジン回転が落ちたとき、そこからせわしなくシフト操作を繰り返さなくても、アクセル操作だけでも減速や加速に対応することができる。しかもギクシャク感は少なく、それでいて車体をグイグイ前に押し出してくれる。

シート高やシート形状はスヴァルトピレン801と共通ながら、シート内スポンジの硬さを変更。ライディングポジションやタイヤ、サスペンションセッティングを変更したことに合わせて、車体の動きをよりダイレクトに感じるようになった。
スポーツバイクの楽しさと、シティーバイクの扱いやすさ。ハスクバーナの801シリーズはこの両方を高い次元でバランスさせているが、「ヴィットピレン801」はよりスポーツバイク的楽しさの領域を広げたと言える。
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