■変化少ない2代目は意外にも成功?
以上のようにN-BOX、フィット、ステップワゴン、オデッセイは、すべて初代モデルが優れた空間効率と実用性、均整の取れた外観などによって好調に売れた。その成果を損なわず、市場に定着させる目的もあり、2代目は外観の変化を抑えている。
そして、フィット、ステップワゴン、オデッセイについては、3代目で外観を大幅に変えたが、いずれも販売面では失敗に終わり、フィットとステップワゴンは4代目で元の路線に戻した。オデッセイは4代目も3代目のクルマ造りを踏襲して売れ行きが下がり、5代目の現行型でエリシオンと統合した。
以前はホンダの社風として、似たようなクルマを2世代にわたって作るのを敬遠した時期がある。例えば1981年登場の初代シティは背が高く、1986年の2代目では低く抑えた。エンジンも新型を次々と刷新した。
1980年代に、ホンダの開発者は次のようにコメントしていた。
「ホンダの場合、メカニズムからデザインまで、理想を追求します。それは良いことですが、価格を高めることも多い。例えばエアコンのスイッチなど、ほかの車種と共通化して差し支えのないパーツまで、独自に設計するからです」
「また、変化を好むので、フルモデルチェンジすると、あらゆる部分を刷新させます。流用しないので、これも価格を高めます」
それなのに、2000年前後に登場したフィット、ステップワゴン、オデッセイの2代目モデルは、初代に似た外観で登場した。スペースを重視した実用指向の車種になると、フルモデルチェンジの仕方まで変わるのかと驚いた。
初代が新しいコンセプトで注目されてヒット作になり、2代目もそれを踏襲するのは、当然の成り行きだろう。フィット、ステップワゴン、オデッセイの2代目は、いずれもバリエーションを充実させて、売れ行きをさらに伸ばした。2代目の現行N-BOXも、初代モデル以上に売れている。
■本当に難しいのは「好調に売れる3代目」を作ること
問題は3代目で、フィット、ステップワゴン、オデッセイは、主に外観のデザインが災いして売れ行きを下げた。この時には、初代と2代目の顧客が別のホンダ車に乗り替えず、ほかのメーカーに移ることも多かったので、顧客の流出も招いた。
1983年に登場したシビックのような「好調に売れる3代目」を作ることが大切だが、容易ではない。むしろ売れ筋路線だと確信したら、それを突き詰めるクルマ作りをする方がユーザーには喜ばれるだろう。
特にフィット、ステップワゴン、オデッセイのような空間効率の優れた実用指向の車種では、ユーザーは変化よりも洗練を求める。「3代続いたら飽きられる」と考えて外観を大きく変えるより、機能やデザインに磨きを掛けた方が喜ばれる。
ミニバンのセレナ、ヴォクシー、アルファード、SUVのハリアーなどは、従来型からの継続性と適度な変化を調和させて、息の長い人気を得ている。無理に変えても顧客からは喜ばれない。
このように考えると、新型N-ONEの変化が乏しいフルモデルチェンジにも納得できるが、塩梅というものもあるだろう。N-ONEらしさを継承した上で、フロントマスクなどに、もう少し新鮮味を出しても良かったと思う。
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