■こだわりのインテリアと快適な乗り心地
エクステリアだけでなくインテリアも未来感覚だった。インパネの両端を左右のドアまで回り込ませ、オーディオなどのセンターパネルは大胆に手前に引き寄せている。
ドアは1BOXと同じように、運転席側は1枚のヒンジドア、助手席側は前席ヒンジドアと後席スライドドアの組み合わせで、リアゲートは跳ね上げ式とした。
シート配列は3列で、アームレスト付きのフロントシートの間から後席へウォークスルーでき、ラクに移動できる。2列目は前席と同じようにセバレートシートだが、回転対座が可能だった。3列目もセパレートシートだが、中央のアームレストを跳ね上げれば3人がけシートになる。
パワーユニットは専用設計だった。2438ccの2TZ-FE型直列4気筒ハイメカツインカムを、右に75度傾けてフロア下に搭載した。
トランスミッションは、コラムシフトの電子制御4速ATを組み合わせている。低回転のトルクはそれなりだが、その気になれば5000回転オーバーまで軽やかに回り、4速ATとの相性もよかった。クルージング時の静粛性も1BOXワゴンを相手にしない。
駆動方式は、後輪駆動とセンターデフにビスカスLSDを組み込んだフルタイム4WDを設定する。サスペンションは、フロントがストラット、リアはダブルウイッシュボーンの4輪独立懸架だ。ハンドリングは軽やかで、コントロールしやすい。
アンダーフロアミッドシップだから重心は低く、ワイドボディだから踏ん張りが利いた。ワインディングロードでもバランスのいい走りを見せる。穏やかな乗り心地も高く評価された。
■滑り出し好調の大ヒット!!
高性能ニューコンセプトサルーンを掲げて登場したエスティマの月販目標台数はわずか2000台である。トヨタ自身も、この先進的なチャレンジに、それほど自信があるわけではなかったようだ。
1990年5月に発売されるや、1BOXワゴンに乗っている人は(取り扱い店舗だった)トヨタ店とカローラ店に殺到した。トヨタ車のユーザーだけでなく、他メーカーの1BOXワゴンに乗っているオーナーもエスティマに興味を示し、週末の試乗フェアに長い行列ができた。
当時、セダンやスポーティモデルでないのにこれほど話題を集めたクルマはなかっただろう。
滑り出しは好調だった。アウトドア派やレジャー派は、積極的にエスティマを選んだのである。駐車場が狭く、全幅の広さに尻込みする人もいたが、小型車を得意とするカローラ店でも売れに売れた。契約した人の多くは夏休みに遊びに行きたいという人がほとんどだ。
だが、ボディカラーやオプション品によっては納期が秋までずれ込んだ。新しいジャンルの3ナンバー車、エスティマはステータス性も高く、自慢できたから大ヒットした。快走は1991年まで続いている。
■魅力的で基本性能の高いミニバンの傑作
エスティマのもたらした功績は、「エスティマが売れた」ということに留まらなかった。大量のフォロワー、「エスティマのようなクルマ」を生み出した点にもある。
その代表格が、1992年1月に登場した弟分のエスティマ・ルシーダとエスティマ・エミーナだった。ルシーダとエミーナは、2860mmの長いホイールベースはそのままに、全長を60mm切り詰め、全幅も5ナンバーサイズの1690mmに抑え込んで登場。しかも2.2Lのディーゼルターボや8人乗りが選べるなど、バリエーションも豊富だった。
エスティマ自身の販売台数は1992年から大きく落ち込んでいるが、3車種合わせた販売台数は当時の日本車の中核を占めていた売れ筋セダンを大きく上回り、日本に「ミニバンブーム」を巻き起こした。
エスティマはその後、8人乗りのXグレードを追加してさらなる魅力をアピール。自慢のリアサスペンションもルシーダやエミーナと同じ4リンクリジッドとした廉価モデルを投入した。
また、1994年夏には主力モデルの心臓をスーパーチャージャー付きの2TZ-FZE型にしている。初期型から後期型のエスティマに乗り換える熱狂的なファンも多かった。
基本性能が高く、魅力を失っていなかったから、初代モデルは1999年12月まで、なんと約10年も販売を続けた。世界を驚かせるメカニズムの数々とユーザーを魅了する快適なキャビン、便利な装備をたくさん詰め込んだエスティマは、21世紀の視点から見てもミニバンの傑作と言ってよいだろう。
2代目が初代の流れを汲むデザインで登場したことからも、初代の偉大さが分かる。
その後、2006年には3代目にフルモデルチェンジ。14年間販売したものの、昨今のアルファード/ヴェルファイアを代表とする「背の高い」、「押し出しの強い」ミニバン勢に押されて次期型開発は凍結、2020年にその長い歴史の幕をおろした。
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