「アテンザ」の名を捨てたマツダの旗艦 MAZDA6はどこに向かうのか

■次期型は後輪駆動車か⁉

 気になるのは、後輪駆動を採用する次期(新型)マツダ6の発売時期だが、2022年4月頃になる可能性が高い。マツダの販売店では以下のように述べている。

 「次期マツダ6の詳細な情報は、メーカーから聞いていない。しかし直列6気筒エンジンの後輪駆動車という概要は、既にメーカーが明らかにした。お客様からの問い合わせも多い。期待の新型車だから、今後の発売時期なども公表して欲しい」。

 先代CX-5と現行マツダ6(当時はアテンザ)が発売された時、マツダは魂動デザインとスカイアクティブ技術に関して、詳細な説明を行った。魂動デザインについては、デザイナーから以下のような話を聞けた。

 「野性のチーターは、生きるために獲物をねらって走るから、ムダな動きがなくて美しい。この姿をクルマに取り入れられないか、と考えた。そこで見えてきたのが背骨の存在だ。

 ボディの前後方向に、軸を通すデザインが大切になる。そして動物が疾走する時に、前足を強く動かすことはない。荷重が後ろ足に加わった状態でダッシュする」。

 このコメントで語られたボディスタイルは後輪駆動だ。スカイラインの生みの親として知られる故・櫻井眞一郎氏も「野性動物は後ろ足で大地を蹴り、前足で方向を変える。従って後輪駆動が自然の摂理に合っている」と述べている。クルマの形状や駆動方式に関して野性動物を引用すると、それは後輪駆動になる。

 そして前述の話を踏まえて現行マツダ6の外観を眺めると、前輪駆動車でありながら、後輪駆動のデザインを追求していることが分かる。今はエンジンを横向きに搭載する前輪駆動車だから、縦置きの後輪駆動車のように前輪を前方へ押し出したボディ形状にはなっていない。

「アテンザ」の名を捨てたマツダの旗艦 MAZDA6はどこに向かうのか
現行型マツダ6フロント
「アテンザ」の名を捨てたマツダの旗艦 MAZDA6はどこに向かうのか
現行型マツダ6リア

 しかしフロントピラー(柱)とウインドーは可能な限り手前(室内側)に引き寄せられ、ボンネットを長く見せている。トランクフードは短く、いわゆる「ロングノーズ・ショートデッキ」の形状だ。

 2012年当時、開発者やデザイナーの説明を聞いてマツダ6の外観を眺めると、彼らが可衰想に思えてきた。本当は後輪駆動車を造りたいのに、与えられたのは前輪駆動のプラットフォームで、涙ぐましい苦労をしているように感じたからだ。

■ようやくマツダが理想とする次期マツダ6の開発が進んでいる

 マツダ6の運転感覚も同様で、ステアリングの操舵角に忠実にボディが内側を向く性格を重視する。開発者からは「メルセデスベンツW124の走りが参考になる」という話も聞いた。

 W124は1980年代から1990年代に製造されたEクラスのことで、当時既に古い車両だったが、前側を下げた姿勢で回り込む走りにはドライバーとの一体感が伴う。運転の仕方を間違えると、後輪の横滑りを誘発しやすかったが、上質な運転感覚が特徴だった。このW124も後輪駆動だ。

 「そこまで言うなら、開発者やデザイナーに、後輪駆動車を造らせてあげればイイじゃないか!」。

 そこでマツダはなぜ中級以上の車種に後輪駆動を採用しないのか、副社長(当時は執行役員)の藤原清志氏に尋ねると「後輪駆動とするには、いろいろな理由から困難がともなう」と返答された。

 それがようやく、マツダから無理をしないで開発できる後輪駆動車が登場する。

 後ろ足で蹴り上げるボンネットの長い外観デザイン、左側にオフセットされることが皆無なペダル配置、人馬一体の運転感覚など、マツダが理想とする次期マツダ6の開発が進んでいる。

次ページは : ■セダン&ワゴンだからこそ後輪駆動が生きる!

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