■東京が舞台の3作目「TOKYO DRIFT」には強烈な個性を放つ日本車が多数登場
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(原題: The Fast and the Furious: Tokyo Drift 2005年)はその名の通り東京が舞台だ。首都高大黒PAや鋸山(千葉県)、渋谷のスクランブル交差点(実際のロケ地はロサンゼルス)や都内の銭湯、首都高兜町駐車場など、ロケ地巡りをしたくなる数多くのポイントが存在する。都心の高速道路を走るシーンは東京高速道路(KK線 D8 )で撮影された。
TOKYO DRIFTには多数の日本車が登場するが、中でもハン(サン・カン)の愛車としてかなりキョーレツなインパクトを与えるのが「世界でもっとも有名なRX-7」と呼ばれるオレンジと黒の『RX-7 Fortune』である。9作目には同じカラーリングのGRスープラが登場し話題をさらった。
RX-7 Fortuneを作ったのは、かつては最高速、近年はボディキットメーカーとして知られるVeilSide(ヴェイルサイド)である。「え?これRX-7?」というくらいアグレッシブな外観が印象的だが、ベースとなったのは2005年の東京オートサロンで初登場した『VeilSideRX-7 FORTUNE』で東京国際カスタムカーコンテストの8部門トップとなるグランプリカーにも選ばれた。
なお、印象的なオレンジと黒のボディカラーはユニバーサル側からの『夜の走行シーンが多いから暗くても映えるオレンジ色をメインに』という要望に応えたものだ。
こちらのボディキットは映画公開から15年以上たった現在も世界中から注文が絶えないという。なおヴェイルサイドのボディキットは1作目の赤いFDや黒いS2000(後にピンク)などにも採用されている。
■ワイスピ20年で価値を爆上げしたクルマと言えば?
この映画の世界的ヒットによって、価値が爆上がりした日本製スポーツカーは数多く存在するが、筆頭はやはり2作目(銀青)と4作目(青)に登場したスカイラインGT-R(R34)だろう。
1999年1月デビューのR34GT-Rが米国で合法的に輸入されるのは製造年月がベースとなるため早くて2023年末~2024年1月だがすでに2018-19年頃から価格高騰が始まっている。
とくに人気が高い「Vスペニュル」などの限定車は3000万円超で落札される個体も出てきている。今年7月にヤフオク!で開催された『BHオークション』では走行距離10km&未登録の『2002 NISSAN SKYLINE GT-R V-SPEC II Nür(BNR34)』が5000万円超で落札されたことも記憶に新しい。
名車復活の立役者となったクルマもある。シリーズ1作目から複数回登場しているトヨタスープラ(A80型)である。
ブライアン役のポール・ウォーカー逝去後に初めて公開された『ワイルド・スピード SKY MISSION』(原題: Furious 7 2015年)のラストシーンではウィズカリファの「SEE YOU AGAIN」をバックにポールがプライベートで所有していた白いスープラとドミニクのダッジ・チャージャーが並走しながら、やがてそれぞれの道へ走り去っていく。
トヨタ自動車が2019年5月に開催した新型スープラ発表イベント「SUPRA IS BACK」ではGT-Rやスープラなど日本車の名場面だけで作った25分間のショートムービー「SUPRA復活記念ワイスピ名場面爆音上映会」が催されたが、「FOR PAUL」と題したメッセージにおいて、トヨタからスープラと日本車を愛してくれたポール・ウォーカーへ感謝が伝えられている。
この時の取材では「スープラが17年ぶりに復活できた背景には、世界中のスープラファンの後押しがあったからで、それを盛り上げてくれた大きな要因にワイルド・スピードがあります。」(トヨタ自動車広報部)とのコメントもいただいている。
JDM人気が世界を席巻するまで、日本車の魅力と言えば、「壊れない」「燃費がいい」「ディーラーのサービス体制が効率的」などのイメージだった。しかし、今やそれらに加えて、「JDMはデザインがカッコいい。チューニングパーツが豊富でボディキットも個性的なものが多い。
いじる楽しさが無限大!JDM最高!」といった声が世界のクルマ好きから聞かれるようになった。日本人の多くが気づいていなかった日本車の魅力を教えてくれたのもワイルド・スピードシリーズの偉大な功績と言えそうだ。
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