目の前に流血者が!! 覚えておけば止血できる ドライバーが修得すべき止血法

 止血は身体の複雑な働きによるもので、血液が異物と接触することでそのしくみが発動する。力で止血するのではないことを念頭に置くべきだ。血液にとっての異物とは血液と血管の内壁の細胞以外のものであり、薄いものより分厚いガーゼ、濡れたものよりも乾燥して吸収する素材を出血している場所に接触させることが最も止血効果が高くなる。

 直接圧迫止血法とは、力まかせに出血を止めるのではなく、異物を接触させるために圧迫力を加えることである。

出血から止血までの流れ
出血から止血までの流れ

 図「出血から止血までの流れ」のとおり、擦り傷程度では3分もすれば自然に止血される(一次止血)が、致命的出血となれば最大で20分かかることがある(二次止血)。包帯状止血剤という薬品を使えばこの時間を4分間にまで短縮することができ、後述する止血帯止血法が行えない場所の止血にも用いることができる。

■直接圧迫止血3layer(スリーレイヤー)法

直接圧迫止血3layer(スリーレイヤー)法
直接圧迫止血3layer(スリーレイヤー)法
止血法の区分
止血法の区分

 直接圧迫止血法は3layer(スリーレイヤー)法が最も効果がある方法だ。図のように異物を接触させるContact layer、接触を継続させるFix layer、保護と安定化のためのCover layerの3段階で行う。血がどんどん出ている中で直接圧迫止血法を行うことは難しく、また、血液が流れている状態では二次止血の凝固血栓が流されてしまい効率も悪い。ダムの工事のように血流を一時的にせき止める必要がある。そこで「止血法の区分」にあるように他の止血法との組み合わせが求められるため、本記事では「直接圧迫止血法へと持ち込む」と表現している。

 止血点圧迫止血法は出血している場所の上流で血管を骨に押しつけて潰す方法だ。間接圧迫止血はお腹の中の圧力を高める方法、止血帯止血法は上腕部、大腿部を緊縛する方法であるが、高い圧力に耐えられる専用の救命止血帯と実技教育を受けた人が行うことが望ましい。以前はまず直接圧迫止血法を試みて、止血できなければ止血点圧迫止血法を行い、最終手段として止血帯止血法を行うようにと段階を踏むように教えていたが、現在では救命のために最初に止血帯止血法を行うこともあり、他の止血法と「組み合わせて」適用する。

救命用止血帯の使用法と止血のしくみ
救命用止血帯の使用法と止血のしくみ

■湿潤環境による組織再生と止血は違う

組織再生と止血の環境の違い
組織再生と止血の環境の違い

 最近は創傷を乾燥させずに湿潤環境で治すようになったが、これを止血と混同している事例が散見される。図「組織再生と止血の環境の違い」にあるように、湿潤環境は止血ができた後の組織の再生のためだ。止血には異物を接触させる必要があるため考え方は真逆になる。救命にはまず止血であり、そのために適切な素材は何かをよく整理しておくことが重要だ。

■止血帯止血法

救命止血帯CAT-G7の構造
救命止血帯CAT-G7の構造

 2004年に図「救命止血帯CAT-G7の構造」にあるCATが開発され、誰でも緊縛止血法を適切に行えるようになった。それ以前の三角巾と棒では、失敗して命の危険を招くおそれがあること、ネクタイとペンなどの応急資材では圧力に耐えられず破損することがあったためだ。

 CATは「新時代のドライバーの役割と必要知識」にある写真のように、日本でもAEDの収納箱の中に備えられるようになったが、米軍の研究では、危険な環境で正しく止血できるようになるためには72回の訓練が必要であることが判明したように、簡単なものではない。

 止血帯止血法はかえって死亡させるおそれがあるため本来は医師でなければ行えない。しかし、血液が体の外に勢いよく出てしまう体外出血の場合は1分で死亡が50%に達するおそれがあるため、やむを得ない場合に限り誰でも行えるようにしている。
考え方はAEDと共通で次の条件が揃っている状況だ。

1 現場に医師が不在で緊急かつ他に救命の方法が無いこと
2 講習を受けた人が用いることが望ましい
3 認可を受けたAEDを用いること

 厚生労働省の見解としては、止血帯止血法は使用者が、次の内容を含む講習を受けていることが望ましいとされる(講習時間は3時間程度)。

1 出血に関連する解剖、生理及び病態生理について
2 止血法の種類と止血の理論について
3 ターニケットの使用方法及び起こりうる合併症について

 本記事は1と2の内容は含んでいる。筆者は世界最新の止血法教育を行っているが、3については実技試験を伴う体験教育が必須と実感している。SAM-XTのように間違いを防ぐ機構を備えた救命止血帯も普及するようになり、難易度も下がり始めている。ドライバーの皆さんには救命のために積極的に救急法教育を受講することを願う。

 ※ ITLS : International Trauma life Support 外傷救命医療進歩のための国際的な取り組み。High Threat course はラスベガス銃乱射事件が発生した現場にて事件について検証しながら郊外の訓練センターにて、世界最新の外傷救護と救命治療について教育する研修

筆者:照井資規
医療監修 
高須 克弥 医学博士 医療法人社団福祉会高須病院理事長
菅谷 明子 医師 日本救急医学会 救急科専門医 予備自衛官
医療法人社団 明生会 東葉クリニック エアポート院長
藤田 千春 看護師 予備自衛官 
招集を受け、台風19号災害派遣
中国武漢市からのチャーター便帰国者支援に派遣される

自動車技術監修
成瀬 優享 学校法人芦屋学園 芦屋大学 経営教育学部 経営教育学科
自動車技術コース講師 

【画像ギャラリー】ドライバーが知っておきたい止血法を画像でチェック(19枚)画像ギャラリー

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