クルマは形状や用途などによってさまざまなカテゴリーに区分けされる。しかし、長い歴史のなかでいつの間にか消えてしまったカテゴリーもある。今回はそうしたいにしえのカテゴリーにスポットを当て、代表的な車種をあげつつ、それらが消えてしまった理由を考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/トヨタ、日産、三菱、ホンダ、スズキ、FavCars.com
【画像ギャラリー】時代の流れとともに消えたカテゴリーに分類されたクルマたち(15枚)画像ギャラリー日本の秘書は運転しなかった!? 「セクレタリーカー」
最初に紹介するのは、かつてアメリカ(北米)で脚光を浴びた「セクレタリーカー」だ。「セクレタリー」とは秘書のことで、直訳すると「秘書のクルマ」。つまり秘書に象徴される働く女性が通勤に使用するクルマということになる。
80~90年代のアメリカでこうしたセクレタリーカーに注目が集まり、ライトウェイトクーペがセクレタリーカーの代表としてもてはやされた。日本で言えば軽自動車感覚だが、そこは国土の広いアメリカ、ライトウェイトクーペでも十分に小さいクルマだった。
日本車でセクレタリーカーとして数えられたのが、トヨタ サイノスや日産 NXクーペ、三菱 エクリプスなど。いずれも手軽に乗れてちょっとオシャレなクルマを望んでいたアメリカの働く女性にウケてヒットモデルとなった。
しかし、我が国ではそもそも働く女性がクルマで通勤するケースがアメリカに比べて少なく、セクレタリーカーというカテゴリーそのものに需要がなかった。加えて実用車の人気はクーペからSUVへと移り変わり、カテゴリーとしてのセクレタリーカーもあやふやになってしまった。
アメリカではまだまだ働く女性が通勤用のクルマを必要としているものの、近年ではジェンダーフリーの観点から「秘書=女性の仕事」という認識もNGになっていることもあり、あえてセクレタリーカーというくくりでクルマを語ることはほぼなくなっている。
需要はあっても車種は変わった? 「ショーファーカー」
「ショーファー」とはフランス語で「お抱え運転手」の意味。つまり、専属運転手がいるような人が購入するクルマがショーファーカー(ショーファードリブン)だ。
ショーファーカーの代表的だった国産車が日産 プレジデントやトヨタのセンチュリー。どちらも大柄な4ドアセダンであり、お値段もそれなりのもの。かつて黒塗りのセンチュリーが走っていると、後部座席には年配の紳士が乗っているなどという光景に出くわしたものだ。
自身では運転せずに、お抱え運転手を雇えるような富裕層や、運転を他人に任せて車内でも仕事をしたい実業家などは現在でも存在する。つまりショーファーカーの需要は現在もあるはずなのだが、あまりこの言葉を耳にする機会は少なくなり、高級4ドアセダンも減ってきている気がするとは思わないだろうか?
どうやら最近はトヨタ アルファードなどのハイクラスミニバンがショーファーカー的な使われ方をされているようだ。車内の広いミニバンは乗り心地も良く、最近の風潮では“いかにも”なショーファーカーは敬遠される傾向もある。たとえお抱え運転手がいても、エコなHVなどに率先して乗るのがハイクラスのステータスというわけ。
とはいえトヨタ センチュリーは国内唯一のショーファーカーとして継続生産されているし、海外ではショーファーカーのために作られたまだまだクルマも多い。
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