■「カタチ」の表現はわかりづらさマックス!!
ハンドリングのような感覚的なものに比べ、クルマのフォルムやデザインといった外形的な要素は、誰もが知覚しやすい一方、好みが分かれる部分でもある。
何をもって良いデザインというのは、受け手であるユーザーに委ねられているのだ。
そうした迷えるユーザーの背中を押してくれるのが、クルマの形状を表す用語だ。
「これは一体……」と思わせるようなデザインスキームも新鮮な言葉でくくると、何だか特別なものであるかのように感じてくるから不思議だ。
●ウェッジシェイプ(楔形)
楔(くさび)形の意味を持つ用語で、車体を横から見た際、低くかまえたフロントからリアにかけてせりあがっていくような、1960~70年代のクルマによく見られたデザインを呼ぶ。
まさに空気を切り裂くような鋭利なデザインは、空気抵抗低減を目的としたフラッシュサーフェス(表面の段差を少なくしたデザイン)化と、前傾した姿勢が生み出すダウンフォースを意識したものだ。
1980年代以降、ボディの成形技術の進化とともに丸みを帯びた形状でも空気抵抗を低減し、居室空間を広くできるようになると、やがて低く角張ったデザインは姿を消していくが、当時のスポーツカーはすべからく、地をはうような低くて薄い形状が採用されていたのだ。
その代表格はいわずと知れたスーパーカーである「ランボルギーニ・カウンタック」、「ランチア・ストラトス」、「ロータス・ヨーロッパ」など。
直線的なボディラインは今見ても新鮮で、むしろ現在よりも未来のクルマといった印象を与えてくれる。
●キーンルック
プレミアムブランドと呼ばれる欧州の自動車メーカーは、ファミリーフェイスに代表されるブランドに共通する意匠を持っている。
BMWの「キドニーグリル」や、アウディの「シングルフレーム」などは有名だ。
エントリーモデルであれ、トップモデルであれ、そのブランドのDNAを感じさせる顔は、グローバルなブランディングにおいて重要な要素といえる。
トヨタはレクサスに「スピンドルグリル」を統一して与えているが、本流のトヨタブランドにも2012年発表のオーリス以降「キーンルック」と呼ばれるデザインを採用してきた。
“鋭敏で賢く精悍な顔つき”を目指し、クルマの顔であるフロントセクションをエンブレムを中心にV字型に広がる立体的なデザインと切れ長で鋭いヘッドライトに統一。
「プリウス」や「CH-R」、「ハリヤー」、に「カローラ」など多くのクルマに採用された。
●ハンマーヘッド
近年、トヨタがキーンルックに代わる新たなデザインスキームとして打ち出しているのが「ハンマーヘッド」だ。
頭部が金槌状の形状となったサメ、和名でいうシュモクザメは、海外では「ハンマーヘッドシャーク」と呼ばれる。
それをモチーフにフロントマスクに横方向に直線的なデザインとその両端に、薄型のヘッドライトを配したデザインは、新型「クラウン」や「プリウス」に採用され、ともにトヨタデザインの新世代を飾るデザインとしてグローバルでも好評だ。
●流麗と官能的フォルム
「流麗(りゅうれい)」とは動作や姿、詩文や音楽などが、よどみがなく美しい様を表現した言葉だが、クルマのボディラインの美しさに対しても頻繁に用いられる。
部分的な美しさでなく“よどみない”というのがポイントで、フロントからリアエンドにかけ、均整のとれたシルエットや面や線につながりを感じるモデルに対して使われる。
どちらかといえば、鋭利なエッジの利いたデザインというよりは、曲線的なボディラインを称する言葉だ。
曲線的なボディラインを持つクルマといえば、イタリアの「フェラーリ」などを思い浮かべるが、フェンダーが張り出したネオクラシックなスポーツモデルにも度々用いられる。
ただし同様の意味を持つ「官能的なフォルム」となると、うねうねした曲線的なシェイプを想像させられる。日本語表現は実に奥が深い。
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