おなじみテリー伊藤さんが日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員となったのは2019年のこと。途中コロナ禍を挟みながらも、2024年で6年連続6回目の参加。テリーさんは「2024年の顔」として、どのクルマを選んだのだろうか!?
※本稿は2024年12月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、日本COTY実行委員会、トヨタ、BYD、ホンダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年1月10日号
ヒョンデ&BYDの躍進が際立っていた!
6年連続6回目の参加である。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の10ベストカー試乗会。2024年を代表するクルマが集合し、一気に乗れるという夢のようなイベントだ。
あれは2019年のことだった。COTY選考委員になり、初めて10ベストカー試乗会に参加して心底驚いた。各社のブースに料理人がいて、凝った料理を提供してくれているのだ。
うなぎ、おでん、フォアグラ入りの洋風肉まんもあったし、高級レストランのランチのような料理もあったし、しまいには職人が握る寿司をカウンターで食べさせるメーカーもあった。
COTY選考委員は毎年、内緒でこんなに楽しいことをやっていたのか! 今まで参加できなかった(選考委員でなかった)のを取り戻すかのように食べまくったのを思い出す。
その後、新型コロナの世の中となり、10ベストカー試乗会の内容も一気に縮小。料理人はいなくなり、供されるのは軽食と飲み物だけになった。そう、魔法は解けたのである。
状況は変わったが、一年を代表するクルマに乗れる楽しみは変わらない。むしろ、試乗に集中できる素晴らしい環境になったとさえ言えるのかもしれない(もちろん負け惜しみ)。
で、2024年の10ベストカー試乗会である。今回は日本車6台、輸入車4台で、輸入車はすべてEVというラインナップになった(BMWミニクーパーはガソリン車とEV)。
なかでも目立っていたのが韓国のヒョンデと中国のBYDで、ヒョンデのアイオニック5N、BYDのシールともに素晴らしい走りを披露。また、ボルボEX30も新鮮なデザインとインテリアで新しさを強力にアピールするなど、EVに関しては輸入車がリードしていることを実感した。
何より、今回の10ベストカーに日本のEVは一台もないのだから、戦いの土俵にも上がれていないということ。日本車メーカーがEV一辺倒にならなかったのがいい判断だったのはわかるが、さすがに一台もないというのは寂しい。2025年は話題になる国産EVを見てみたいものである。
【画像ギャラリー】日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員テリー伊藤さんが選んだ2024年を代表するクルマは!?(32枚)画像ギャラリー10ベストカーは世相を映す
この記事が公開されるのは2025年。2024年のイヤーカーは決まっていて、今、これを読んでくれている皆さんはもう結果を知っているはずである。
今回のCOTYは、プロ野球のドラフト会議に喩えれば複数球団が1位で競合するような大物選手はおらず、各球団が補強したいポジションの選手を選択するイメージ。
実力はあるが小粒さは否めず、イヤーカー争いも混戦になったと想像する。私自身、最高得点をどれにするか相当迷った。
イヤーカー選びには自分が乗って楽しいクルマと世の中に影響を与え、支持されるクルマの2通りあると思っている。今回は後者を重視してランクル250を最高得点とした。
ランクルは昔から好きなクルマだが、250はボディが大きすぎて個人的には購入対象にならない。しかし、世界で高く評価されていて、日本人として誇らしく思えるクルマなのは確か。そのあたりがイヤーカーにふさわしいと考えたのだ。
ランクル250と迷ったのはボルボ、ヒョンデ、BYDの輸入EV勢。特にBYDのシールは力任せに530psを炸裂させるクルマで、その強引さが楽しい。理路整然と走りを組み立ているBMWミニクーパーのEVとは対照的で、怖いもの知らずの大物ルーキーという感じがよかった。
一方で、今回はドイツ車が一台もなく、また、スタイリッシュなクーペもなかった。ドイツの代わりに中国、韓国の新興勢力が力をつけていることがよくわかったし、クーペが絶滅寸前の希少な存在になっているのもよくわかった。COTY10ベストカーは世相を映す鏡でもあるのだ。
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