コンパクトミニバンのNo.1争いで鎬を削るシエンタとフリードの年間販売台数は、シエンタ11万1090台、フリード7万3279台となった。代替わりしてフリードの戦闘力は高まったが、それでもシエンタが売れ続けるのはなぜだろうか。スペック表やカタログからは見えてこない、シエンタの強みを探っていきたい。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】年間11万台以上も売れるクルマです!! 見てわかるミニバン売れ筋ナンバーワン「シエンタ」をギャラリーでチェック(18枚)画像ギャラリーカタログスペックでも確かに「シエンタ良いよね」となる
現行型シエンタが登場したのは2022年8月。2024年にはフリードのモデルチェンジを見越してか、5月に一部改良を行ったものの、その内容はあまりにも地味すぎて、これでフリードに勝てるのかとも思った。しかし、販売台数では危なげなく勝利している。
ボディサイズは全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mmで、フリードよりも全長が50mm短く全高が80mm低い。5人乗りと7人乗り(フリードAIRは6人乗りと7人乗り)で、2列目シートがベンチタイプになるのが、シエンタの大きな特徴だ。
デザインや室内空間は、それぞれの好みで優劣が付きそうだが、圧倒的に違うのが運転支援機能や先進安全装備の部分。フリードのHonda SENSINGはカメラだけのシステムだが、シエンタは単眼カメラとミリ波レーダーが付く。
衝突被害軽減ブレーキではフリードが歩行者対応なのに対して、シエンタでは歩行者駐車(昼夜)はもちろん自転車運転者(昼夜)・自動二輪(昼)まで付くのだ。便利に使えるアダプティブハイビームもシエンタZでは標準だが、フリードAIR EXではオプション扱いだし、シエンタにはプロアクティブドライビングアシストまである。
表面的な豪華さではフリードに惹かれるものの、クルマの基本的な部分を比べるとシエンタの方が安心。それでいて車両本体価格はハイブリッドZ(2WD・7人乗り)で303万6600円と、フリードe:HEV AIR EX(2WD・6人乗り)より17万5400円も安いのだから、「シエンタ良いし、お得だよね」となるのは自然な流れだろう。
ミニバンらしさを求めない層に売れている?
トヨタ販売店でシエンタの販売状況を聞いていると、フリードとは少し違った傾向があるように感じた。
フィットとステップワゴンからの買い替え対象となるフリード。対してシエンタはアクアやヤリスといったコンパクトカーや軽自動車からの乗り換えが多いという。フリードと大きく違うのは、ミドルサイズのノア・ヴォクシーからシエンタに乗り換える人が圧倒的に少ない点だ。
2列目のベンチシートやフリードよりも80mm低い全高は、ミニバンとしては弱点なのだが、セダンやステーションワゴンなどの乗用車と乗り味が近しいと見れば利点になる。これが、ミニバンの豊富なトヨタラインナップの中で、埋もれずに売れ続ける、シエンタの強さの秘訣なのだ。
コンパクトハッチやセダン乗りの中には、全高が高くてフラフラするミニバンの乗り心地を嫌う人が一定数いる。ただ彼らの中には、家族が増えて今のクルマが手狭で仕方ないという問題を抱えた人も多いのだ。ここにシエンタが、ぶっ刺さる。
バンではなく乗用車ライクな走行性能と乗り心地がシエンタの武器。これが、シエンタが万人受けする理由である。
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