【潮目が変わった!? 最新CVT爆誕!!】「スポーツ走行に向かない」と言われるCVTに新たな可能性

CVTの加速フィールは制御の工夫で改善されつつある

 CVTはフィーリングが悪い、というのは制御に問題があることが大きい。全負荷(スロットル全開時)や中負荷程度の加速時にエンジン回転だけが上昇し、徐々に減速比が下がって(高速側へシフト)いく制御が採用されているが、この時減速比の制御を滑らかに行なおうとするほど、人間の感じる加速感との乖離が起こる。

 エンジンは勢い良く回っているのに前に加速している加速感は希薄で、けれどもスピードメーターの針は確実に上昇している。

 車速が高まればドライバーはアクセルを緩めるから、そこでエンジン回転が下がって巡航に向かうが、MTならまるでクラッチが摩耗して滑り始めているような加速感は、通常のステップAT車に乗るドライバーでも違和感を感じるもの。

 ゴムが伸びるようなのでラバーバンドフィールともいわれるこの加速感は、CVT独特のものだ。

 筆者としては、スバルのリニアトロニックはそうしたラバーバンド感の少ない、優れたCVTだと思うが、それでもMTやステップATとは感触の違う部分はあるのは否めない。

 MTモードでシフトしても、どうしてもベルトが移動する時間やシフトが完了した瞬間のダイレクト感がやや鈍い。これは構造が影響している部分だから如何ともしがたい。

 それらは人間が感じるフィーリングの部分なので、慣れるか諦めるか、違うクルマを選ぶしか解決策はないだろう。

 しかしCVT自体は効率が低く、フィールに違和感を感じる部分があるといっても、決して変速機として魅力がない訳ではない。それにスポーツATとしての能力はそれほど悪くない。

全日本ラリーで実績を積んだCVTが市販型GRヤリスCVTにフィードバック!

 サーキットでエンジン排気量などを統一されたツーリングカーレースのようなエンジンパワーの全てを路面に伝えて戦うような競技ではパワーロスが大きく厳しいだろうが、ジムカーナのように低速域からシフト操作を頻繁に行なう競技やラリーのようにエンジンパワーを全て路面に伝え切れないような競技では、CVTでも十分に戦える。事実、ジムカーナではコペンのCVT車、ラリーではヴィッツのCVTが活躍している。

 全日本ラリーにCVTのヴィッツが参戦しており、2017年と2018年シーズンのJN3クラスで、2年連続でシリーズ2位。2019年は新設されたJN6クラスで3チームに供給し、大倉聡/豊田耕司組のヴィッツCVTが開幕4連勝し、年間クラスチャンピオンを獲得している。

 全日本ラリーに参戦しているヴィッツのCVTは、トヨタがアイシンと共同開発中のスポーツCVTを搭載したもので、競技中はスポーツモードを選択すると加速時も減速時もエンジン回転数を最高出力が発生する6100rpmをキープするように減速比が制御される。

 つまりアクセルオンで常にエンジンは最高出力を発揮し続け、車速は減速比が変わっていくことでコントロールされるのである。こんな芸当ができるのはCVTだけだ。

 東富士研究所でTGRヴィッツCVTの開発にかかわるトヨタ自動車パワートレインカンパニーの高原秀明氏は、

「一般的にCVTは燃費が良いというイメージがある反面、スポーツ走行には向かないと認識されています。

 しかし、2017年の挑戦で、CVTは専用のLSDを採用することで、スポーツ走行を可能にし、さらに制御プログラムの改良によりMT車両にも劣らないパフォーマンスが発揮できる場合があることを証明できたと実感しております。

 CVTは制御次第で、ステップATのようにもDCTのようにもできる。そして、走りに振れば速さの追求もできます。

 CVTにより、シフトチェンジをすることなくハンドル操作に集中できるという利点を生かし、一人でも多くの方がモータースポーツを始めるきっかけになっていただけたら幸いです」とコメント。

 このヴィッツCVTは、装備としてはLSDとオイルクーラーを追加した程度で、CVTは純正のまま。セッティングを変えたECUによって、最高出力を維持しながら、無段変速のプーリーとVベルトを最適な位置にして走れる。

 ヴィッツのエンジンに合わせて6100rpmを徹底的にキープするよう常に変速比をコントロールしているMT車のようにシフトアップしていく時のロスがなく、両手でステアリングを握り、パドルシフトも必要もなく、右足はアクセル、左足はレーシンドライバーのようにブレーキに専念できれば、理想の走りが実現するという。

 この制御自体は量産モデルへのフィードバックを前提に開発されているが街乗りを無視するわけにはいかない。

 そのためトラクションコントロールをオフにして、センターコンソールのスイッチを押してスポーツモードにした時のみ、モータースポーツ用の制御になるようになっている。

全日本ラリーに参戦しているヴィッツCVTに装備されているセンターコンソールに配置されたSPORTモードスイッチ
全日本ラリーに参戦しているヴィッツCVTに装備されているセンターコンソールに配置されたSPORTモードスイッチ

 ラリー走行のシフトポジションはDレンジ固定が基本であり、パドルシフトのようなギミックもない。また、左足ブレーキを積極的に使えるような制御にもなっているという。

 ちなみにこのスポーツCVTの技術は、すでに市販車に活かされている。2017年9月に発売されたトヨタ ヴィッツ GR SPORT“GR”の制御に採用されているのだという。

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