CVTが嫌われる理由は?
CVTが嫌われる理由は「伝達効率が低い」ということと「加速時のフィーリングが悪い」という2点に尽きる。
確かにCVTは変速機としては伝達効率が低いものだ。それはMTも通常のステップATも歯車が噛み合って動力を伝達するのに対し、CVTはプーリーが金属のベルトを挟み込んで動力を伝えるという摩擦伝達という仕組みが影響している。
決まった位置で噛み合う構造ではないため、自在に減速比を変えられる反面、ツルツルに研磨されたプーリーが金属ベルトを挟み込んで動力を伝えるには、相当ガッチリと挟み込まなければならないため高い油圧が要求される。
この油圧を作り出すためにエンジンの動力が使われるのと、ベルトを挟む時と放す時には滑りが生じるので、どうしても伝達効率をロスしてしまうのだ。
しかしCVTは変速時のトルク切れが起こらないため変速がスムーズであることや、変速比幅が大きい割に構造がシンプルなので小型軽量に仕上げられるという利点もある。
そこで多段化が難しいFF用の横置き変速機では、コストの点からも日本メーカーの多くはCVTを採用しているのだ。
金属コマのエレメントを重ねて鋼板ベルトで束ねたエレメント式CVTは、大排気量大トルク車には向かないと言われてきたが、ジヤトコはチェーン式CVTと同じトルク容量(380Nm)をエレメント式CVTでも実現している。
チェーン式CVTの方がトルク容量が大きいと思われてきたが、スバルのWRX S4でもスポーツリニアトロニックを組み合せたエンジンの最大トルクが400Nmとなっているから、現時点ではほとんど差がない。
チェーン式はプーリーがチェーンを挟み込む時に打音が発生するので横置き変速機では静粛性を確保するのが難しいので、あまり使われていないが、ジヤトコは技術的には獲得しており、ラインナップとして用意している。
ともあれ2LターボやNA3.5Lエンジンとも組み合わされるCVTを開発できたのは、日本の変速機ならではの技術力と努力の賜物だろう。
なぜスバルはチェーン式CVTにこだわるのか この先を予想する
おそらくチェーン式CVT開発時には、スバルの技術者や経営陣は多段ATがこれほど高効率化され普及するとは想定していなかったのだろう。それほど6速以上の多段ATは登場から急速に普及してきた。
スバルが変速機メーカーに多段ATを外注することは不可能ではないが、そうなると問題となるのはAWDだ。
スバルの場合、エンジンの全長が短いため、変速機内にセンターデフとフロントデフを組み込んで直接、フロントタイヤへ駆動力を伝えられる。
一般的な縦置き4WDはエンジンの横にフロントデフを配置するため普通のATの後部にセンターデフを配置すればいいので、ATは普通の構造で実現できる。
その代わり、リアのドライブシャフトは左右等長でもフロントは不等長になり、加減速時にトルクステアなど左右不均等な力が発生する場合がある(もっとも低ミュー路では強い加速など実現できないので、それによりスピンするようなことはまずない)。
それに対してスバルのシンメトリーAWDは前後とも等長のドライブシャフトにより、低ミュー路での駆動力の変化にも車体を不安定にさせる力が発生しにくく、電子デバイスやドライバーに車体を安定させる制御や操作を必要とすることなく、安心して走らせることができる。
それにはもちろん低重心な水平対向エンジンとの組み合せが、大きく貢献している。このレイアウトとともにAWDの制御やデフ回りの設計はノウハウの塊だ。そう簡単に外部の変速機や駆動系メーカーに外注することはできないだろう。
もっともシンメトリーAWDでなければ、ノウハウを知ったところでおいそれと真似できない。
先日、スバルは報道陣向けに技術説明会を開催したが、そこではプラットフォームや次世代アイサイト、電動化に向けたロードマップも披露された。
EVは別としてストロングハイブリッドは現在北米市場に投入しているトヨタのTHSを応用した電気式CVTのハイブリッド変速機とする考えが示された。
となればガソリンエンジン用に別に多段ATを専用開発するとは考えにくいから、エンジン車にはチェーン式CVTが使われ続ける可能性が高い。
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