名車エスティマ復活を!! 「背の低いミニバン」がアルファードに勝てない理由

ライバル車と比較すると

 そこで気になるのがライバル車の動向だろう。アル&ヴェルは全長が4800mm、全幅は1800mmを上まわるLサイズだから、同等の大きさのミニバンと比べたい。

 そうするとオデッセイは2020年3月の登録台数が1090台、エルグランドは399台と大幅に少ない。

 また以前はアル&ヴェルとプラットフォームを共通化したエスティマも選べたが、フルモデルチェンジを受けず、2006年に登場した3代目を約13年間造って、2019年末に廃止された。

 つまりLサイズミニバンでは、アル&ヴェルのみが好調に売れて、それ以外の車種はすべて低調だ。その理由を探りたい。

オデッセイハイブリット(5代目・2017マイナーチェンジ)
オデッセイハイブリット(5代目・2017マイナーチェンジ)

 オデッセイの売れ行きは、アル&ヴェルの約10%と少ないが、商品力は高い。すべてを決定付けたのは床の高さだ。アル&ヴェルの床面地上高は450mmと高く、オデッセイは低床プラットフォームの採用で340mmと低い。

 そのためにアル&ヴェルはサイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りするが、オデッセイなら路面から直接足が床に届くから乗降性が良い。

 床の高さの違いは、3列目シートの着座姿勢にも影響を与えた。アル&ヴェルは床が高いから、3列目は床と座面との間隔が不足して、足を前方に投げ出す座り方になりやすい。

 左右に跳ね上げて格納するから、座り心地も柔軟性が乏しい。頭上と足元の空間は広いが、3列目の座り心地は、1/2列目に比べて大幅に劣る。

 その点でオデッセイでは、床と座面の間隔に不足はなく、着座姿勢がアル&ヴェルに比べて自然な印象だ。オデッセイの3列目は床下格納だから、座り心地もアル&ヴェルの3列目より少し柔軟に仕上がった。3列目の座り心地は、アル&ヴェルよりもオデッセイの方が快適だ。

 この低床設計を生かして、オデッセイは全高を1685mm(アブソルート)に抑えている。アル&ヴェルの1935mm(ノーマルエンジン車)に比べると250mm低いが、オデッセイは床の高さも140mm下まわるから、室内高は75mmしか違わない。

オデッセイの外観は、ワゴン風で天井が低く見えるが、低床設計だから室内高には意外と余裕がある。車内が窮屈には感じにくい。
オデッセイの外観は、ワゴン風で天井が低く見えるが、低床設計だから室内高には意外と余裕がある。車内が窮屈には感じにくい。

 そしてオデッセイは天井と床が両方ともに低いから、ミニバンとしては重心が低く、アル&ヴェルよりも走行安定性が優れる。乗り心地はアル&ヴェルも快適だが、峠道などを走ると、オデッセイであればボディが左右に振られにくく不快感も少ない。

 つまりクルマの床と天井の高さは、必要な最低地上高と室内高が確保されているなら、低いほど良いのだ。乗降性と居住性が優れ、低重心になって車両重量も軽くなるから、走行安定性、動力性能、乗り心地も向上する。

 天井が低ければ空気抵抗も減るから、燃費も良くなる。逆に床と天井を高めて得られる機能的なメリットはひとつもない。

トヨタにはホンダのように出来ないのか? それとも??

 それならトヨタには、ホンダのような低床設計技術がなかったのかといえば、それは違う。特に現行アル&ヴェルはプラットフォームを刷新したから、開発者は「その気になれば床をさらに低く抑えることもできた」という。

 実際に同じトヨタのヴォクシー系3姉妹車の床面地上高は約380mmだから、アル&ヴェルに比べて70mm低い。ヴォクシー系3姉妹車は、従来型比べると、乗降性や3列目の居住性を大幅に向上させた。

アルファードの床面地上高。フロア高はヴォクシーたちより高い。
アルファードの床面地上高。フロア高はヴォクシーたちより高い。

 それならなぜアル&ヴェルは、機能で不利になるのに床を高く保ったのか。開発者は「アル&ヴェルのお客様は、周囲の見晴らし感覚を重視するからだ」という。

 確かに観光バスのように周囲を見晴らせるためには、床と天井を高めねばならない。「背が高いことによる外観の目立ち度や存在感は?」と尋ねると「そこもお客様に好まれる場合がある」と返答された。

 つまりアル&ヴェルが好調に売れて、オデッセイなどほかのLサイズニバンが売れない理由は、まさにこの点に集約される。

 アル&ヴェルは、安全に影響する低重心に基づいた走行安定性、乗り降りのしやすさ、ミニバンの機能を左右する3列目の着座姿勢よりも「外観の存在感が強く、見晴らしの良いボディによる顧客満足度と、それによる好調な売れ行き」を優先させたのだ。

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