ガソリン価格高騰より深刻!? ナフサ不足で迫る「愛車が直せなくなる日」

ガソリン価格高騰より深刻!? ナフサ不足で迫る「愛車が直せなくなる日」

 世の中ではナフサが「足りている」「足りてない」などと議論が続いているが、いずれにしても流通の末端では深刻なナフサ不足が生じているようだ。その余波はクルマユーザーにも及んでいる。この状況が続けばクルマが「買えない」だけでなく、愛車を「維持できない」状況にもなりそうだ。

文:鈴木喜生/写真:写真AC

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そもそもナフサとは?

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政府は、レギュラーガソリンの全国平均価格を1リッターあたり170円程度に抑えられるよう補助金を支給しているが、これがなくなれば再び国民生活を圧迫することに

 ナフサとは、原油を精製する過程で生成される石油製品の一種。プラスチック、合成ゴム、合成繊維、塗料、接着剤などのベースになるため、あらゆる製造業や化学産業の「基盤」とされる。

 タンカーで運ばれてくる原油は真っ黒でドロドロしているが、これを約350℃まで加熱すると大部分が気体になる。気体になった原油を「蒸留塔」という巨大な塔の底に入れると、塔の内部を上昇していくが、その途中で気体は冷えて液体に戻る。

 この時、沸点が低く液体に戻りにくい成分ほど気体のまま塔の上まで昇っていく。この原理を利用すれば、原油に含まれるそれぞれの成分を分離できるというわけだ。

 塔の上の方まで昇る軽い(沸点が低い)成分から並べると、LPガス、粗製ガソリン(ガソリンとナフサ)、灯油、軽油、重油とアスファルトとなる。

 ナフサとガソリンは兄弟のような存在で、精製される時には「粗製ガソリン」として一緒に抽出される。ただし、それをそのままクルマに給油すると、オクタン価が低すぎて異常発火(自己着火)を起こし、ノッキングでエンジンを傷めてしまう。そのため、この粗製ガソリンにさまざまな加工(接触改質)を施すことでガソリンが生み出される。

 一方、石油化学原料として利用されるのがナフサであり、エチレンやプロピレンなどを製造するための原料となる。

ナフサ不足がなぜ大問題?

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サービスとしてスーパーに置かれているビニール袋などを撤去している店舗も増えているという

 ナフサは樹脂や合成ゴム、塗料、接着剤、シンナーなどの基礎原料となる。つまり自動車業界にとってナフサは縁の下の力持ち。

 パーツでいえばバンパー、内装パネル、エンジンルーム内の樹脂ホースなど、あらゆるものがナフサを原料として製造されている。これが枯渇すれば交換部品が不足し、その価格が高騰するなどさまざまな支障が出る。

 合成ゴムの原材料不足と調達コスト増を背景に、日本ミシュランタイヤをはじめとする各メーカーが国内向け夏タイヤの出荷価格値上げに踏み切った。この状況が続けば、その他の消耗品においても値上げは波及するだろう。

 また、エンジンオイルのベースとなるオイル(基油)はカタールなど中東からの輸入(約2割)に依存しており、ホルムズ海峡の混乱によって供給が激減。現在、店頭では品薄や入荷未定が続いている。とくに流通量の少ない「ディーゼル車用オイル」において在庫の不足が目立つという。

 クルマの補修・塗装に不可欠な「シンナー」や「塗料」も、ほぼ100%ナフサ由来の溶剤だ。そのためこれらの仕入れ価格も高騰しており、修理工賃(塗装代)への価格転嫁が相次いでいるだけでなく、工場の営業縮小さえ始まっている。

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車両整備や車検にも影響大

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ディーゼル車に欠かせないアドブルーの不足が流通業を直撃。物価上昇の要因になる可能性も

 ナフサが不足すれば、当然ながら車両整備にも支障が出てくる。実際、部品や消耗品の目詰まり(流通の滞り)と相まって、修理期間の長期化や維持費の増大という形でユーザーを直撃しつつあり、車検が停滞・延期するリスクが、すでに現実化しはじめている。

 前述したオイル不足は、特に車両整備時には大きな支障となり、オイル交換の費用が値上がりするだけでなく、過度に進めば車検を停滞させ、最終的には整備工場の経営さえ圧迫するだろう。

 ディーゼル車の定期整備に不可欠な尿素水(アドブルー)も、一部ではナフサ不足の余波で1カ月以上入荷がないなど欠品状態が続いているようだ。

 また、消耗品の代表ともいえる各種フィルターも不足がち。エンジンのエアフィルターにおいては外枠のプラスチックフレーム、気密性を保つためのゴム製パッキン(ガスケット)、不織布などはすべてナフサからできている。

 オイルフィルターであれば、内部のろ紙を固定する樹脂パーツや、エンジンと接する部分のゴムパッキン(Oリング)などがナフサ由来。

 エアコンフィルターの場合は、蛇腹状のフィルター本体の多くが、ポリエステルやポリプロピレンといったナフサ由来の合成繊維で作られている。

 一部のショップでは、オイル交換自体はできても、フィルター交換ができないケースも出始めており、純正品だけでなく、サードパーティの在庫も薄くなりつつある。

 ブレーキフルードの主成分であるグリコールエーテル類もナフサ由来のため、供給が滞れば整備現場への影響はさらに深刻化する可能性がある。

 こうした事態においては車検満了日に間に合わなくなるリスクを考慮し、車検の予約を通常より早い時期にするほうがよいかもしれない。つまり、お金を払えば済む話ではなくなりつつあるといえる。

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