新車も作れなくなる!?
こうしたナフサショックは、新車の生産ラインにも大きな影響が出ている。2026年5月25日には、トヨタが海外において8.3万台の減産を決定した。当初予定の3.8万台から大幅に拡大して、11月までに海外で8万3000台減らすという。
こうした事態に対し、政府や部品大手メーカーなどは米国やペルーからの代替調達を進めており、最悪期は脱しつつある。しかし、部品などの高コスト状態は6月に入っても続いており、供給が滞れば生産ラインが停止するおそれさえある。
現時点においては人気車種を中心に、新車の納期遅れが長期化(数カ月〜1年以上)する見込みだ。また、原材料費の跳ね上がりを吸収しきれず、今後発売される新型車や既存モデルの車両本体価格が、数%〜10%程度値上げされるリスクも高まっている。
【画像ギャラリー】ナフサ不足で修理難民続出!?(8枚)画像ギャラリー政府「足りている」、現場「足りていない」
こうした状況において、政府は「ナフサは足りている」と主張しているが、実際はどうなのか?
直近の「貿易統計」(財務省)を見ると、原油の輸入量が前年比約64%減、ナフサ単体の輸入量も約47%減と、どちらも海外からの調達量は激減している。
日本は高度成長期の頃からナフサの不足分を海外から直接製品を輸入して補ってきた。
しかし、その主要な輸入先もUAE(29%)、クウェート(21%)、カタール(19%)など中東諸国ばかりで、現在ではその輸入量が激減している。ナフサは原油と違って国家備蓄がなく、純粋な液体ナフサ単体の国内民間在庫は通常約20日分の水準であり、現在はこれを辛うじて維持している状況だ。
同時に、国内流通の仕組み(制度や心理的要因)による目詰まりも起こっている。これらのダブルパンチによって、あらゆる現場ではナフサ不足が現実に起こっている。
では、なぜ政府は「ナフサが足りている」とアナウンスし続けているのか?
第一に、原油の備蓄量がまだ十分にあるという点だ。2026年6月1日時点における資源エネルギー庁の発表によると、日本の石油備蓄量は203日分。これが政府の「心配ない」とするベースとなっている。
また、中東からの輸入が減少したナフサを他国からの輸入拡大でカバーしており、特にアメリカからの輸入は前年比200倍以上のペースで急増している。中東からの不足分をすべて補えているわけではないが、当面は間に合うと政府は考えている。
シンナーや塗料、塩ビ管などの出荷・供給量に関しても、経済産業省のデータによると前年並みまたは前年以上の水準を維持している。つまり、流通上のいわゆる「川上」からは十分な量の供給がなされていると判断しているわけだ。
そして川中・川下(中間製品)の国内在庫においても、ナフサそのものだけでなく、それを加工したプラスチック原料(ペレット)や溶剤などの在庫が、国内需要の約2カ月分程度が存在しているとされる。
これらのデータにもとづく結果、供給不足や目詰まりを起こしているのはナフサ自体の不足や供給不足ではなく、流通経路上で発生している買いだめや過剰発注、さらには投機的な価格の吊り上げが主な原因だと、政府は考えている。その結果、国民に不安を抱かせず、市場や流通がヒステリックな状況になることを抑えようとしているわけだ。
ただし、停戦合意が実現し、ホルムズ海峡の航行正常化が進んだとしても、各国のタンカー運航や国内の流通網が直ちに平常化するとは限らない。ナフサ不足に端を発した国内流通網の混乱は、当面続く可能性があるだろう。
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